吉田豪インタビュー企画:ウーマンラッシュアワー村本大輔「自分は人間関係も器用なキンコン西野とは違う」(2) (2/3ページ)

デイリーニュースオンライン

■日本のお笑いより海外のコメディアンに刺激を受ける

──だけどTwitterは昔と比べたらだいぶ落ち着きましたよね。昔はもっと無差別にケンカしてたじゃないですか。

村本 してました。ただ、よくTwitterやってる有名な人が「こんなリプがあった」とか言うんですけど、それってすっごい簡単なことしてるなと思ってきて。だってTwitterのアンチみたいなやつなんて、言ってみれば全員天然キャラ芸人ばっかりじゃないですか、ツッコミどころ抜群の。ここに手をつけるのはもういいんじゃないか、みたいな。ライブで大衆の前で「Twitterでこんなことがあってね」とか話してるときに、すっごい世界が狭い気がして。昔テリー伊藤さんに僕の独演会のDVDを観てもらったときに、「半径5メートル以内のことばっかりなんじゃない?」って言われて、たしかになと思って。

──それはTwitterでよくケンカしてた頃?

村本 ケンカに明け暮れてたときですね(笑)。それでたしかに世界が狭い気がして、海外のコメディアンを観てたらおもしろいな、世界が広いなと思って。あるエジプトのコメディアンがいて、前の大統領の独裁政権のときに芸人を始めて、大統領の皮肉ばっかり言うんですよ。それで何回も逮捕されるんですよ。コメディにしたら逮捕されるような国にいて、番組も終わらされたりするのに、それでも皮肉を言うんですよ。で、「世界一危険なコメディアン」って言われて、命を奪われそうになっても独裁者の悪口を言うんです。それってカッコいいなというか。

──そういうコメディアンに刺激を受けるようになって。

村本 日本のお笑いの人を知れば知るほど、売れてる人を知れば知るほど、早いけどちょっと頑張ったら追いつくかな、ぐらいの感じで、そんな驚きはしなくなってきてて。海外の闘い方とか生き方とか、せっかくお笑いを名乗ってるんやったら同じ闘い方してたら……だから村なんですよね。何人かの長老が村のしきたりみたいなのを決めて、みんなそのなかでやっていくから。だから吉本が……って言ったらアレですけど、コピーロボット大量生産工場みたいな感じがして。

──ほかの自由な村を知っちゃったわけですね。

村本 はい。そこはもっと広くて、だから日本のお笑いをカッコいいと思わなくなったというか。

──茂木さんは罪作りなことしましたよね、こういうタイプの人に教えちゃいけないことを教えちゃったっていう。思いっきりスイッチ入ってるじゃないですか。

村本 そうです(笑)。今度ライブがあって、茂木さんにゲストで来てもらおうと思ってオファーしたらOKしてくれたんで、やりましょうってことになってるんですけど。……これからお笑いはどうなるんですかね?

■自分の作ったネタで人を集めて大金を稼ぎたい

──村本さんとちょっと考え方が近いのはキングコングの西野(亮廣)さんかもしれないですね。吉本興業という枠から外れて何ができるのかを探っているっていう意味では。

村本 あぁ……。吉本にいたらそうなるかもわかんないですね。それこそ同期の芸人に言われることがあって、「おまえは肉をえぐってるんだ。だからみんな嫌がるんだ、損するんだ」と。「でも芸人って、芸人以外の人の肉はえぐるくせに、自分がえぐられたらめっちゃ守りに入るやん」って言い返すんですけど。で、海外のスタンダップコメディの話をすると、「海外は海外なんだよ。おまえは日本でやってるんだし、吉本でやってるんだから、吉本には吉本のやり方があるんだよ」って言われたとき、この考え方は怖いなと思って。「吉本の芸人なんだから」とか「テレビに出てるんだから」っていう考え方が……テレビに出たら、そこには吉本っていう明確なルールはないじゃないですか。これを言っちゃいけないとか勝手に何人かが決めて、ないルールを勝手に作って、「ここから出ちゃダメですよ」みたいな。これって怖いなと思って。そんなことよく言えるな、ニューヨークに行くくせにと思って。

──えらいピンポイントな悪口になってますよ!

村本 でも、僕はお笑いしか……西野みたいに絵がうまかったらあんな感じでできていいですけど、たまたまこのツールしかないので。あと、めちゃくちゃ稼ぎたいんですよね。吉本はいっぱい劇場ありますけど、8割は死人の顔で漫才してるというか……。

──うわー!

村本 カラオケの文字が浮かんでくるかのように同じセリフをずっとしゃべり続けてる死人ばっかりがね。朝4時ぐらいのカラオケですよ、みんな。それを見てたら、ここにおったらあかんなというか、ここにおってもいいけど、ここを変えなあかんというか、このまま歳だけとっていったらヤバいぞと思うんですよね。だから、なんとかしたいなと思ってるんですけど。

──稼ぐとなると地上波が一番なんじゃないですか?

村本 でも、それって500万、600万とかの話ですよね? あと、テレビが合ってるのかなというのと、ほんまにそれやりたいんかっていうのがあって。特に『土曜The NIGHT』みたいな番組で味をしめてしまうと、たしかに地上波って顔は売れる、お金もらえる、それに関してはいいですけど、顔を売って小銭を稼いで時間を費やしていくのって大事なんかなと思って。もっともっと100パーセント満足できる仕事をやり続けたほうが大きい金につながるんじゃないかなという感じはありますね。

──最近、あからさまにAbemaの仕事が増えてますけど、Abemaはたぶんギャラ単価は安いじゃないですか。

村本 Abema、最初はちょっと高かったんですよ。それが噂なんですけど、ほかのテレビ局の人に「芸人にそんなやらなくていいよ」って言われて、それから急にガーンと落ちたって(笑)。だから最初の芸人は高かったんですけど、いま急に単価が安くなってる。不健康なことは極力……地上波も呼ばれたら出たいし、出ますけど、「出たいし」とか、なんなんかなと思うようになって。ワシはグラビアアイドルか、なんでもいいから出たいんか、みたいな。それってどうなんかなとか。テレビだけなんかな、どうなんかな……Netflixのスタンダップコメディの影響かな。

──そこも茂木さんきっかけ!

村本 スタンダップのコメディアンが5万人集めて舞台の上で好きなことしゃべって金を稼いでるの見たら、すごい夢があるというか。自分の作ったもので大金を稼ぎたいなって。テレビに出てる芸能人でおもしろい人がいても、所詮全員で作り上げてるものやから、いわばテレビ新喜劇で。それよりも1対1でちゃんと勝負したいというか、俺はひとりでネタを作るみたいな、勝手に自分の都合いい方向に理由をいっぱいつけて自分を鼓舞してますけどね。

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