「文学的失語」に見舞われた芥川賞作家 6年ぶりの新作を語る(1) (5/6ページ)

新刊JP

表紙

――「幻聴譜」などは、言葉が溢れ出していて、「小説の言葉がなくなった」という状態だったのが信じられないほどです。

諏訪:「幻聴譜」は小説というよりは散文詩に近いかもしれません。「目で聴く」というと変ですけど、とにかく音になってさえいれば、リズムさえ踏んでいれば、何が書かれてもいいという感じで自動筆記(オートマティスム)のように自由に書きました。

段落替えもそうですし、一行空けのタイミングもすべて「紙の上で音楽を奏でる」ということを意識しています。読んでもらったり見てもらうのも大切ですけど、それ以上に聴いてもらうという作品にしたかったんです。この点、表題作の「岩塩の女王」も同じです。

――「ある平衡」は一見、諏訪さんらしくない「普通の小説」と思いきや、やはり途中からおかしくなっていく。

諏訪:そうなんです。「恋愛小説」に4年以上費やしたあげく完成させられなかったので、「何とかちょっとでも普通な小説を試みたことにしたい」という気持ちがあって、比較的オーソドックスなものを、というつもりで書きましたが、やはりといいますか、途中から狂気が侵入してきてしまいました。たぶん健康的な世界に耐えられないんです。

僕は片岡義男さんが昔から好きで、普通の女性が出てきて、普通に生活して恋をして一日が終わるっていう普通の話が憧れでもあったのですが、自分でそれを書こうとしてもどうしてもできないんです。でもまたいつか懲りずに挑戦したいです(笑)。

――書いていて自分で気持ち悪くなってくるんですか?

諏訪:落ち着かなくなってくるんですよね。世界が健全だと、それこそ逆に平衡がとれない。僕自身、普通の生活をして幸せになりたい人間なのですが、どういうわけかそれがなかなかうまくいかず、突然自殺を思い立ってすぐやめたりとか、まったく安定しません。

「「文学的失語」に見舞われた芥川賞作家 6年ぶりの新作を語る(1)」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る