世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第248回 人手不足と人件費 (1/3ページ)
現在の日本は、雇用改善と実質賃金下落が両立するという奇妙な状況にある。
2017年9月の完全失業率は2.8%、有効求人倍率は1.52倍。共に主要先進国の中で「最高」の水準だ。実は現在の日本の雇用環境は、先進国で最もよいのである。それにも関わらず、実質賃金は下落が続いている。
'17年9月(速報値)の日本国民の実質賃金は、現金給与総額で対前年比▲0.1%、決まって支給する給与は▲0.3%。恐ろしいことに、日本の実質賃金は、現金給与総額で'16年12月、決まって支給する給与は'16年9月以降、対前年比でプラス化したことがない。日本国民の貧困化は、今でも続いている。
第二次安倍政権が発足した'12年以降、わが国の実質賃金はすでに5%も下落してしまった。人手不足が深刻化していく最中に、実質賃金が下がり、国民の貧困化が続いているのである。
異様だ。異様だがデータを普通に見れば、今日本で何が起きているのかが理解できる。左図(※本誌参照)の通り、第二次安倍政権発足後の就業者数を見ると、
●高齢者 212万人増加
●女性 212万人増加
●生産年齢男子 49万人減少
と、働き手の主力たる生産年齢(15〜64歳)男子の就業者が減少する反対側で、高齢者と女性の就業者が激増しているのだ。
第二次安倍政権下において、生産年齢人口比率の低下を受け、「企業が引退する団塊の世代の穴埋めとして、短時間労働(パートタイム・アルバイト)の高齢者、女性を雇用した」結果、日本の就業者数が増加したことは、誰の目にも明らかである。
何しろ生産年齢の男性の就業者数は、50万人近く減ってしまっているのである。短期労働が増えた結果、実質賃金も当然ながら低迷した。生産年齢男子の就業者が減少し、反対側で高齢者と女性の就業者数が増えた結果、就業者の総計が増えているわけだが、これが、「安倍政権の金融政策のおかげ」と、主張するのであれば、「金融政策」から「生産年齢男子の就業が減り、高齢者と女性の就業者が増える」までの政策の波及プロセスをきちんと説明してもらわなければならない。
現在の日本の雇用環境を決定付けているのは「人口構造の変化」であり、安倍政権の金融政策ではない。