あの超黒素材ベンタブラックに匹敵するほど真っ黒な鳥「超黒鳥」の秘密が明らかに
数年前、光の吸収率が99.965%という驚異の黒さをもつ素材、ベンタブラックが開発されたことは記憶に新しいかと思うが、自然界にも存在するようだ。
パプアニューギニアに生息するフウチョウ科の極楽鳥の中には、最大で99.95%という驚きの光吸収率を持ち、その輪郭すら見えなくなる、ブラックホールにも似た真っ黒な鳥が存在するという。
いったい彼らはなぜこんなにまで超黒なのだろうか?
その秘密が解明されたようだ。
・超黒の秘密は羽の構造にあった
米ハーバード大学のダコタ・マッコイ氏は、博物館の標本を調査し、どのようにしてその超黒が生じるのかを突き止めた。その秘密は羽の極小レベルの構造にある。
典型的な鳥の羽には羽軸という軸が中央を通っている。そこから羽枝が生え、羽枝からはさらにもっと細かい小羽枝が生える。これらはどれも同じ平面に沿って平らに生えている。
だが極楽鳥の漆黒の羽はずいぶん違って見える。小羽枝が平面ではなく上向きにカーブし、微細なトゲのようになっているのだ。形容し難いが、ボトルブラシかサンゴのような感じだという。
こうした独特の構造は光を捕捉することに長けている。通常の羽に当たった光は、水平の表面を簡単に反射する。
しかし超黒の羽の場合、ほとんど縦の表面がもつれている。このため光は反射してそこから離れたせず、小羽枝とそのトゲの間を繰り返し跳ね回り、その都度光は吸収されていく。こうして羽の中で光は消えてしまう。

フウチョウ科の仲間でもすべてが超黒の羽をもつわけではない。(a)(b)は普通の黒の羽だが、(c)(d)(e)(f)(g)は超黒の羽をもつimage credit:Dakota McCoy
・光の吸収率はなんと99.95%、通常の黒い鳥の10~100倍
この光を捕捉するナノテクノロジーは、当たった光の99.95%を吸収する。その吸収率は、カラスやクロウタドリといった他の黒い鳥の10~100倍だ。
人間が作り出した最も黒い物質は「ベンタブラック」であるが、その吸収率99.965%にも匹敵する黒さである。ベンタブラックの場合、垂直のカーボンナノチューブの”森”を育てるために約400度が必要になるが、極楽鳥は同じような森を体温で生体物質のみを利用して育て上げる。
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ベンタブラックの吸収能力は凄まじく、そこにレーザーを当てても赤い点は見えない。それと似たようなことが極楽鳥の羽でできる。
下に挙げた2枚の画像は、いずれも金粉が振られた羽毛を写したものだ。

image credit:Dakota McCoy
左は鳥としては平均的な黒さのオオクロチメドリのもので、周囲と同じ金色をしている。一方、右は極楽鳥の仲間ウロコフウチョウの羽だ。
それは金粉に覆われている。それでも相変わらず黒い。金粉は微小な森の溝に落ちているのだが、その輝きは失われてしまっている。
・極楽鳥のみに限ったものなのだろうか?
こうした事実はまた別の疑問を提起する。果たして、こうした特性は極楽鳥のみのものなのだろうか、それとも別の種も同じような光学特性を進化させたのだろうか? またさせたのなら、それは同じように羽を改変した結果なのだろうか?
多くの動植物が微小構造を用いて、金属的な光沢を宿す鮮やかな色彩を作り出している。だが色を吸収するために微小構造を用いる種は少ない。
ガボンアダーは最長のヘビでその超黒をカモフラージュに使っている可能性がある。輪郭線を見えなくして、残りの部分が熱帯雨林の葉に紛れやすいようにするのだ。
・求愛の為に超黒を利用する極楽鳥
その一方、極楽鳥はおそらくその黒を他の仲間と同じ目的のために使っている。求愛である。
カンザシフウチョウの求愛映像
Western Parotia
「こうした光学的錯覚は周囲の色を際立たせるために進化したのだと思います。動物の目と脳は環境光の量を調整するようにできています。日光の下でも木陰の中でもリンゴが赤く見えるのはそのためです。超黒のフレームはこうした能力を阻害します。そのため付近の色はいっそう明るく、輝いてすら見えるようになります」(マッコイ氏)
極楽鳥のオスはこれを巧みに使う。オオウロコフウチョウは漆黒の羽を放射し、その間で頭をさっさと振りながら、喉の光沢ある青を誇示。
カタカケフウチョウは超黒のケープをはためかせては、頰と胸の青い部分を誇張。その様子はまるで大きな口が開いているかのようだ。カンザイフウチョウなら超黒のチュチュでシミーを踊り、極彩色の喉を披露する。
パプアニューギニアに住む極楽鳥のオスたちの求愛映像
Bird Of Paradise Courtship Spectacle - Planet Earth - BBC Earth
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ダンスショーが最も効果的に見えるのはまっすぐ正面から見た時だ。この角度からなら、小さな小羽枝とトゲが見せる対象に対してまっすぐ向くために、きちんと光を捕らえることができる。
横から見ると黒の濃さはやや失われる。ダンスを披露するオスが意中の相手に正面から対峙し、決して横を見せないよう気を砕くのはこのためだ。

image credit:youtube
超黒は人間にとっても便利だ。軍用機のカモフラージュ、太陽パネルの吸収率を高める、望遠鏡に進入した光が逃げることを防ぐなど、様々な用途が考えられる。
超黒の羽構造が解明されることで、低コストな超黒素材が3Dプリンターで簡単に作れる未来がくるのかもしれない。
References:nature / theatlantic / phys/ translated by hiroching / edited by parumo