元国連捜査官が見た北朝鮮「ブラックホール」(10)軍事パレードに反対できない

アサ芸プラス

元国連捜査官が見た北朝鮮「ブラックホール」(10)軍事パレードに反対できない

 北朝鮮はそんな韓国の足元を見透かすように、五輪への参加を口実に、世界にメッセージを発信しようとしている。

「金正恩は一貫して経済発展と核開発を同時並行で進めてきました。経済自由化政策が平壌で彼の人気を支えてきた。経済成長戦略も、金正恩にとって重要な骨子。ところが核・ミサイル開発を加速化させたため、国際社会からの締めつけが厳しくなった。北朝鮮では制裁の影響で徐々に経済的ダメージが強まっており、イメージも悪化しています。世界の視線が集まる五輪で『我が国は偉大なスポーツ大国である』ということを誇示し、その国際的立場の正当性をアピールすることで、経済制裁緩和に向けた足がかりを見いだしたい。それも北朝鮮が五輪に参加する理由の一つではないでしょうか」

 さらに古川氏は、もう一つの狙いを「北朝鮮の核ミサイル保有を国際社会に認めさせる目的もあるのでは」と指摘する。

「まだアメリカに届く核弾頭搭載可能な長距離弾道ミサイルは未完成のはずですが、飛距離だけを考えれば、理論的にはアメリカ本土に届きそうなミサイルが完成しつつある。『張り子の虎』ながらも、対米核抑止力の完成を宣言したうえで五輪に堂々と参加する。こうして核保有国の立場を国際社会に既成事実として受け入れさせたい思惑も考えられます」

 そんな北朝鮮は五輪開催前日の2月8日、平壌で軍事パレードを行うのではないかと見られている。

「すでに平壌の各国の大使館に招待状を送付済みで、パレード開催はほぼ間違いないでしょう。問題は、どういうパレードになるか、です。兵士や戦車などを行進させるだけか。あるいは新型の弾道ミサイルも出すのか。もしそうなっても、韓国はすでに五輪で北朝鮮と合同チームを編成している以上、今さら北朝鮮の選手を排除するわけにもいかない。弾道ミサイルを誇示しているのにおとがめなしで五輪に堂々と参加できれば、北朝鮮は国際社会にみずからの核・ミサイル能力を認めさせることができた、と誤解するかもしれません」

 ともあれ、五輪期間中は一時的にせよ、北朝鮮の挑発行為は抑えられる可能性が高い。問題は五輪終了後の動向だ。

「金正恩としては当然、米韓合同軍事演習は中止しろ、との要求を強めるでしょう。中止しなければミサイルや核の実験の再開、またはロケット発射に踏み切るかもしれず、元の緊張状態に逆戻りする可能性が高い。一方、トランプ政権も、北朝鮮が米本土を攻撃できる核ミサイルを完成させたと判断すれば、武力行使に踏み切るかもしれません。トランプ政権は『全ての選択肢はテーブルの上にある』と一貫して明言しています」

 どの選択肢にするかまだ決めてはいないものの、必要とあらば、やる時にはやる、ということなのだ。

「元国連捜査官が見た北朝鮮「ブラックホール」(10)軍事パレードに反対できない」のページです。デイリーニュースオンラインは、週刊アサヒ芸能 2018年 2/15号古川勝久軍事パレード国連安全保障理事会平昌五輪社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る