ハート出版、『犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る 侵略に気づいていない日本人』を刊行。中国の侵略招いたチベットに酷似した日本の現況に警鐘。 (3/5ページ)
ペマ氏は、日本の憲法や、それを支持する多くの知識人、政治家の発言が、「かつてのチベットを滅ぼした言説とまるで同じ幻想にとらわれたもののように見える」と述べている。
チベットにも、心から平和を祈る人々は僧侶をはじめとして、たくさんいた。しかし中国は、そんな彼らを踏みにじり、無慈悲にも虐殺したのだ。
チベットが侵略された最大の原因は、僧侶たちが、国防のための近代的な軍隊の必要性を認識していなかったからである。チベットの例は、どれだけ平和を願っても侵略は阻止できず、国防を忌避する姿勢が逆に侵略を招くことを示している。
中国の侵略を身をもって体験し、命からがらインドに逃れたペマ氏には、「平和憲法」をかざして国防を忌避する人たちの言葉は、他民族に支配されるという現実を知らない人の戯言にしか聞こえない。
ペマ氏の故郷である東チベットでは、中国人の支配にことごとく反抗し、ゲリラ活動を続けていたが、チベット中央では、東チベットが抵抗するから中国を怒らせ、平和が損なわれるのだという雰囲気があったと言う。このあたりも、今の日本のメディアの言説や、尖閣で領海侵犯する中国船に対する日本政府の対応とよく似ている。
当時のチベットと今の日本の大きな違いは、強力な同盟軍の有無であるが、それがなければ、すでに日本もチベットと同じ運命をたどっていたかもしれない。
ペマ氏は「同じ民族の中に、中国に内通する人間を作り出していくのも、中国の得意なパターンである」と指摘しているが、日本の中にも、中国の侵略を容易にするために行動している日本人が、活動家、政治家、マスメディアの中に大勢いることだろう。
次に、ペマ氏が語る日本の内的な危機について。
この本におけるペマ氏の日本分析の深いところは、日本の強さの源泉は日本人の自然観に基づく「おかげさま」精神にある、と喝破している点だ。ペマ氏は来日当初、日本人が「おかげさまで」という言葉を頻繁に使うことを奇異に感じていた。自分の努力で試験に合格したのに、なぜ人のおかげなのだろうと思い、なかなかその言葉を口に出せなかった。