100年ぶりの新種「クマノザクラ」紀伊半島で発見 なぜ、これまで気づかれなかった? (2/2ページ)
それらとは異なる特徴を持ったサクラが咲いていることも知られていたが、「似てもいるし、変異なのだろう」と考えて見落としていたというわけだ。
ところが、2014年に森林総研が実施した全国のヤマザクラの調査で事態が動く。
「ヤマザクラの遺伝的変異を調査するものでしたが、紀伊半島産のヤマザクラとされた葉の標本をみたところ、明らかにヤマザクラとは思えない形態をしていました。そこで、2016~2017年に詳細な現地調査を行った結果、自生しているヤマザクラやカスミザクラとは区別できる新種を確認したのです」
美しいピンクのサクラ(画像は森林総研プレスリリースより)
クマノザクラの特徴は、花の付け根部分が短く無毛で、葉はヤマザクラ・カスミザクラよりも小さく卵形。開花期は3月中旬ごろからと、他の桜よりも早く重ならない。
さらに多くのサクラは花弁の色が白、薄紅色なのに対し、クマノザクラは淡紅色。写真で確認しても美しいピンク色だ。人為的に改良したわけでもないのに花が咲く時にほとんど葉が伸びないため、観賞価値が高い。高品質な個体から種苗を作り出すことで、新たなサクラとして利用することも期待できるという。
もちろん、まだ調査・研究途上でそのルーツには不明点も多い。勝木さんも次のように指摘する。
「現状では他地域での生息は確認されておらず、地域固有種のようにも思えますが、調査が進んでいないので、他地域で確認される可能性は否定できません。西日本のヤマザクラは変異が大きいとされており、仮に分布が紀伊半島に限定される場合、ヤマザクラの地域変異(特定の地域内で生じる変異)か、カスミザクラなどの変種の可能性もあり得ます。クマノザクラのルーツは今後研究を進め、議論されていくことになるでしょう」案外、我々の身の回りにも、見落とされている新種のサクラが咲いているかもしれない。山中で花見をする際は、花だけでなく色や葉の形をよく見てみると、まさかの発見がある?