「被災地を観光する」岩手県陸前高田市【前編】:傷跡から記念公園へ 原風景を失った街が目指す姿 (2/7ページ)

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バスのなかからもわかるひんやりとした明け方の気温を、結露を拭う指先で感じながら、まだ一度も被災地を訪れたことのなかった「横着者」のわたしに、これから訪れる街はいったいどんな景色を見せつけるのか。すでに出発から7時間。ぼんやりとした頭に微かな緊張を感じながら、目的地に向かうバスの揺れに身を任せていた。

朝6時半頃、バスは陸前高田市役所前に到着した。ここは震災のあとから造成された場所で、高台の上を走る一本の道路の西側には新しくつくられた警察や消防署、JRバス専用駅、市民のためのコミュニティホールなどがあり、反対側にはプレハブの陸前高田市役所仮庁舎が建っている。

「奇跡の一本松」周辺は記念公園として整備される予定だ。 「奇跡の一本松」周辺は記念公園として整備される予定だ。

「やあ、よく来たね」。その彼はバス停まで迎えに来ていた。時間は朝の6時半である。わたしは到着してまだ間もないうちに、この地域の「何もない違和感」を、取材者としての高揚感も手伝い不躾(ぶしつけ)にまくし立てた。彼は黙って聞いていた。

正確に言うとここには何もないのではない。小さいが「駅」もあるし、一部仮庁舎ではあるが行政施設も揃っている。バスを降りた場所の目の前はピカピカの大手のコンビニチェーンである。

正直に言おう。外部からの不躾な取材者(侵入者)が求めたのは被災地としての景色である。同情すべき被災地としての緒(いとぐち)を目の前の風景のなかに見つけ、観光客、あるいは(良心的に言って)取材者として早く安心したかったのである。

勝典さんは用意していたクルマを走らせながら、ある場所を案内してくれた。街の西側にある、津波の到達した跡が残る高い鉄塔と津波によって寸断され廃線になった線路である。これがわたしが恥ずかしくも求めた景色だ。はじめての土地だがわたしの体感でも、ここは海からはかなりの距離があることがわかる。わたしは思わず息を呑んだ。

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