世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第276回 米朝首脳会談の衝撃 (2/3ページ)
北朝鮮ではなく「朝鮮半島の非核化」という話になると、在韓米軍撤収の主張が正当化されてしまう。理由は、在韓米軍はいつでも核兵器を保有でき、しかもかつては実際に核兵器を保有していたためだ。
1991年まで、在韓米軍には核兵器が配備されていた。在韓米軍に配備されていた戦術核兵器は1000発を越え、'91年9月にブッシュ大統領(当時)が撤収を表明したのである。
北朝鮮に言わせれば、在韓米軍が存在する限り「半島非核化」は実現不可能という話になる。当然ながら、
「在韓米軍がある以上、一方的に自国が核兵器を破棄することはできない」
といった論調で時間稼ぎをしてくるだろう。
トランプ大統領は、首脳会談前に、
「過去の失敗を繰り返さない」
と語っていた。とはいえ、共同声明を読むかぎり、北朝鮮の「時間稼ぎ作戦」が成功したとしか思えない。何しろ声明の中で非核化は謳ったものの、具体的な検証やプロセスには触れず、弾道ミサイル破棄に関する言及すらないのだ。さらに、北朝鮮の朝鮮中央通信は13日、両首脳が朝鮮半島の非核化を実現する過程で「段階別、同時行動の原則」の順守が重要との認識で一致したと報じている。これまでアメリカが求めてきた「完全、かつ検証可能で不可逆的な核放棄」など、どこかに吹き飛んでしまった。
一応、対北朝鮮制裁は継続することになってはいるが、中国やロシアをはじめ、制裁破りの国が続出することになるだろう。結果、北朝鮮は一息つくことができ、核ミサイルの最終的な完成までの時間稼ぎができる。
筆者は、いわゆるリビア方式でなくとも、せめて国際原子力機関(IAEA)の査察くらいは入ると期待していたのだが、それすら言及されていない。声明文には、
『米朝首脳会談の成果を履行するため、米国と北朝鮮はマイク・ポンペオ米国務長官と北朝鮮の担当高官が主導して、できるだけ早い日程でさらなる交渉を行う』
と書かれたが、要するに具体的な話は何も決まっていないのである。それにも関わらず、アメリカ側は文書で北朝鮮の体制保障を確約してしまった。無論、北朝鮮が査察を受け入れたとしても、山がちで核兵器の「隠蔽」の地形には事欠かない国だ。実際に、北朝鮮が核放棄をすることはないだろう。