世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第276回 米朝首脳会談の衝撃 (1/3ページ)
個人的に驚愕したのだが、6月12日、予定通りシンガポールでトランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談が開催された。筆者が「米朝首脳会談は開催されない」と主張していたのは、アメリカと北朝鮮が事前協議において2つの「溝」を埋められないと考えたためだ。
●アメリカは「北朝鮮の完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」を望んでいるが、北朝鮮は「朝鮮半島」の段階的な非核化を主張している(※在韓米軍撤退含む)。
●北朝鮮はアメリカによる「永続的な体制保障」を望んでいるが、トランプ大統領は自分の後継者の判断はコミットできない。
米朝首脳会談が開催されたということは、これら2つの「溝」が埋まったという話になる。問題は「いかにして埋まったか?」だ。
米朝首脳会談後に公表された共同声明によると、
『トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、金委員長は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した』(※共同声明文より引用)
とのことである。
「北朝鮮の完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」ではなく、「朝鮮半島の完全非核化」だ。自国ではなく「半島非核化」と引き換えに、北朝鮮は「文書(共同声明)」により安全の保障を手に入れたことになる。金正恩の勝利である。
共同声明文は全体的に抽象的で具体性は皆無なのだが、それにしても北朝鮮による核査察の受け入れすら盛り込まれていないのは驚きだ。非核化関連の記述は、上記に加え、
『2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島における完全非核化に向けて努力すると約束する』
があるのみである。
板門店宣言において、韓国と北朝鮮両国は、
『朝鮮半島の完全な非核化を南北の共同目標とし、積極的に努力をすること』
について合意した。北朝鮮は対韓国に続き、対アメリカでも「朝鮮半島(※北朝鮮ではなく)」の非核化について合意したわけだ。しかも、信じがたい話だが、トランプ大統領は米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習を中止する意向や、将来的な在韓米軍の縮小、撤収の可能性についてまで言及した。