世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第278回 経済用語によるプロパガンダ (2/3ページ)

週刊実話



 例えば、資本装備率が着実に上昇しているにも関わらず、全体の生産性が上昇しないならば、TFPに含まれる「人材の質」が劣化している可能性はある。とはいえ、そうではないのだ。
 そもそも、従業員の生産性を高める責任を担うのは経営サイドである。竹中氏の言い分だと、生産性上昇の義務が一方的に労働者に課せられていることになってしまう。これは「一般論」でも何でもない。
 生産性向上のためには、もちろん従業員自身の努力(人材投資)も必要だが、それ以上に効果が大きいのが設備投資、技術投資、さらには政府の公共投資によるインフラ整備である。すなわち資本ストックの拡大だ。そして、労働者1人当たりの資本ストックこそが「資本装備率」である。
 式で書くと、
●生産性向上=資本装備率の増加+TFPの増加
 になる。

 経済産業省の資料(「生産性・供給システム革命」に向けて)には、
 「我が国の資本装備率は細かくは増減を繰り返しつつも、近年、ほとんど伸びていない。従業員数の増加と同じ程度にしか、有形固定資産(資本ストック)が伸びていないためであり、1990年代後半から資本ストックの伸びが低迷し、現在に至るまで資本ストックの伸びは低調、足元でも低下傾向にある」
 と珍しくまともなことを書いている。

 まさに1997年の橋本緊縮財政以降の日本経済のデフレ化により、企業が投資を増やさなくなった。結果、労働者1人当たりの資本ストックは低迷した。企業規模によっては「減少」し、結果的に生産性が伸びていない(結果、実質賃金が増えない)。これが「日本経済の真実」なのである。
 そんなことは竹中氏は百も承知であろうが、生産性の低迷の責任を労働者に押し付け、残業代を補助金呼ばわり。竹中氏は、「高度プロフェッショナル制度」を打ち出した産業競争力会議のメンバーの1人。まさに「これが日本の現実」という印象だ。ちなみに1997年以降の日本企業が資本ストックを低迷させたのは、当たり前である。何しろデフレではもうからない。
 というわけで、本気で政府が日本の労働者の生産性を高めたいのであれば、やることは一つ。政府の財政出動によりデフレから脱却し、企業が「投資をすればもうかる」環境を構築することだ。
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