【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第14話 (1/4ページ)

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第14話

前回の13話はこちら。

【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第13話

■文政七年 夏と、秋(6)

後の月の九月十三日。

清明な月の下を訥々と歩いて、佐吉は一人、吉原遊廓を訪れた。

画像 広重「江都名所 吉原日本堤」ボストン美術館

佐吉が引手茶屋の座敷に揚がってしばらく待つと、紫野花魁が障子を開いて入ってきた。

佐吉は座敷に揚がった花魁に杯を差し向け、甘い声を出した。

「花魁、今日こそ二人で一緒に月を見てくれるかえ」

「あい、もちろん」

みつは明朗に笑った。訊きたい事もあったが、胸の奥にそっと蓋をした。

「では早速、月見と洒落込むか」

佐吉はそう言うと、青簾の外を眺めるのではなく脇にあった荷を解いた。

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