【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第17話 (2/4ページ)
みつは一瞬動きを止めて、まん丸な目いっぱいに涙を溜め、そしてまっさらな笑顔で強く頷いた。
「うん・・・・・・!」
もう、誰に何を聞かれていようが構わない。
どんな折檻も仕置きも、国芳がいるのなら何の事はない。
「だから」、
みつの視線と国芳の視線が、深く絡み合って一つになった。
「めえもそれまで、絶対諦めんな!」・・・・・・
みつは思った。
嘘でもいい。
夢物語でもいっそ、構わなかった。
誰かがこんな言葉をくれる瞬間を、どれほど待っただろう。
十数年間もがいていた真っ黒な泥濘(どろ)の中から、今ようやく解き放たれたような気がした。
これからはどんな時も、国芳が傍にいる。
二人は、互いを掻き抱いた。
「おみつ」、
国芳は玻璃に触れるような優しい手つきで女のまとう小袖に触れ、
「この小袖、たんぽぽと同じ色だ」
と言った。
みつは濡れた睫毛を上げた。
装いは花七宝の小袖、その上の長羽織は丹念な仕立ての総絞り。どちらも陽光で染めたような温かな薄黄色が、よく似合っていた。
「岡本屋のお内儀がめえに似合うと選んでくだすったんだ。おみつ」、
国芳はみつの手を取った。
「たんぽぽの色オ見せてやらア。

