「ビジネスの仕方がとにかくエグい」 作家が取材の先に行きついた「マネーのモンスター」 (5/5ページ)

新刊JP

『FOCUS』を創刊する際、部下の編集者たちに「君たち、人殺しの顔が見たくはないのか」と言ったといわれる人物です。とにかく超の付く俗物。そして記者である僕らも俗物。だから人殺しの顔も、男の人生を狂わせた女の顔も見たい。そういう取材は面白いですよね。

――では、取材相手も「ならず者」のような存在の方がワクワクする。

永瀬:僕自身はならず者になれませんからね(笑)。一線を越えている人間に会い、話を聞くのが好きなんです。

以前、『19歳 一家四人惨殺犯の告白』というノンフィクションを書いたんですけど、それは1992年に起きた市川一家4人殺人事件の加害者の男(犯行当時は19歳)にスポットをあてた本です。取材で拘置所にいる本人に面会すると本当に驚くことばかりでした。想像とはまったく違っていて人殺しとは思えない。取材者の僕に対して「あなたみたいな人と表(拘置所の外)で出会いたかった」「死刑になることが分かっていればこんなことはしなかった」と言うし、差し入れした本を読むと人間性もどんどん変わっていくんですね。人って、あるきっかけで転んだり、逆に立ち直ったりするものなんだなと実感しました。

――有馬が途中、調査対象の経営者に懐柔されそうになります。あのように騙されることも記者として普通に起こるのですか?

永瀬:ありますよ。詐欺師が詐欺師であることなんて分からないですからね。だから何回も騙されています。この人はすごく良い人だなと思っていると、「えっ」と思うような形で裏切られる。彼らは息を吐くようにをつくんですよ。普通の人なら嘘をつくときに表情を変えたり、その素振りを見せるけれど、そういう人は本当に分からないですね。

ただ、彼らのなかには嘘をつこうと思っているわけではなくて、本気で世界を変えようとしている人物もいる。だから、そういうベンチャー企業の経営者なんかは革命家だと言われるわけです。世界の歴史を紐解いても革命家は妄想家でもありますから。

――本作で有馬が調査するミラクルモーターズは「EV(電気自動車)の革命児」として世間から持て囃されます。EVといえばテスラ社のイーロン・マスク氏が話題にもなっていますが。

永瀬:そうですね。EVについてもすごく取材しました。全固体電池の開発の難しさは感じましたし、でも開発が成功したら世界は変わるでしょうね。夢があるからこそ、詐欺みたいなものがそこに食い込むと、簡単に騙されちゃうと思います。そういえば本書刊行直後にイーロン・マスクが米証券取引委員会(SEC)に証券詐欺罪で提訴されました。手前味噌ながら、あたかも小説内の記述が現実を予言したようで驚きました。

(後編「“紀州のドン・ファン”はまだまだ? ホンモノのお金持ちの真の姿とは」に続く)

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