跡形遺さない災害による死。そのような死を形に留めておく慰霊碑という存在 (4/5ページ)

心に残る家族葬



この言葉に象徴されるように、震災であらゆるものを失ってしまった人々にとっては、石碑・慰霊碑・石像などが亡くなった家族の「依代(よりしろ)」となり、宗教学者の西村明が言うように、「どうして彼(彼女)は死んだ(あるいは死ななければならなかった)のか?」という死の意義づけ」、または「その死の現実を納得し受け入れるための説明」となる。更に生き残った人々にとっては、「同じような犠牲が出ないように、(場合によっては自然との戦いとして)防災の技術や姿勢を高めていく」ものとなるのだ。

■2018年は地震、豪雨、猛暑、台風と災害の多い年

2018(平成30)年は、例年になく、自然災害の多い年だ。4月9日の島根県西部地震、6月18日の大阪府北部地震、西日本を中心とした6月28日〜7月8日の集中豪雨、40度越えが何日も続いた夏の猛暑、7月20日の台風12号、8月1日の台風13号、同月8日の台風15号、同月22日の台風20号、9月3日の台風21号、同月6日の北海道胆振東部地震、そして同月29日の台風24号など、例年にない自然界の猛威に、我々はなすすべもなく呆然と立ち尽くしてしまっている状況だ。

日高市の「水天の碑」は、立て札の記載通り、「今では忘れられた存在」となっている。しかしかつては、東日本大震災の後に多く立てられた石碑や慰霊碑同様に、亡くなった人々と残された人々をつなぐ「依代」、そして天災は防ぎようがないが、それを最小限にとどめるための「警告」、または「無事」が当たり前のものだと思って、日々漫然と過ごしがちな人々に対する「戒め」、そして、「無駄死にはするな!」と亡くなった人々からの「訴え」を表してきたはずだ。静かに佇む「水天の碑」には、今ある自分の命への感謝と共に、多くの学ぶべきことがある。

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