ベストセラーを生み出す編集者・柿内尚文 その目が見据える出版社の行き先とは? (3/5ページ)
あのときにやった多様にものを考える訓練は今にも生きています。先輩とは信頼関係があったので、きつかったけど楽しかったです。
――アスコムの編集者の皆さんにはどのようなことをアドバイスしているのですか?柿内:よく言っているのは、「クリエイティブの仕事に大切なのは性格の悪さ」という話をしています。肯定した視点で見るのではなく、否定した視点で見る。そうすれば色んなものにツッコミを入れられますし、ダメなところを考えるとそれまでなかった代案の発想が出てくるようになる。ただ、コミュニケーションで性格を悪くしちゃダメですけど。
――その後、柿内さんはアスキーを経て、アスコムに移りベストセラーを連発しますが、その原点は、ぶんか社時代に学んだクリエイティブに対しての厳しさがあった。柿内:クリエイティブについては厳しかったです。それと、ここでは言えないようなこともたくさんありましたし、無茶も一杯しました(笑)。とにかく失敗ばかりで、何度も土下座しましたし、時には取材対象者から殴られたこともありました。ただそれでも仕事は面白かったです。自分の考えがそのままページになるのは楽しかったですし、その経験がなければ、この仕事は続けていなかったかもしれないです。
■「類書データは見ない」 本をつくるためのマーケティング ――話を本づくりに戻しまして、本を作る上で大切にしていることはなんですか?柿内:読んでいただける対象をできる限り絞らないようにしています。いわゆるターゲットです。たとえば、『「のび太」という生きかた』という本がいま売れているんですが、この本は出版から14年たっていて、今年9万部増刷をして、32万部に到達しました。
『「のび太」という生きかた』は最初、20~30代のビジネスパーソン向けに作っていた本なんです。でも今一番この本を読んでいるのは小学生なんですよ。読書感想文や課題図書として読まれています。
ちなみに、書籍のCコードはビジネス書なので、ランキングはビジネス書に入ります。すると、なるほど、この本は小学生にとって初めて読むビジネス書になるんだなと。それも新たな価値ですよね。