ベストセラーを生み出す編集者・柿内尚文 その目が見据える出版社の行き先とは? (5/5ページ)
そこで実績が出せれば、別の棚に行く、というやり方ですね。トライ・アンド・エラーを繰り返してノウハウをためていくことで、再現性のあるつくり方、売り方が分かってくるんです。
凡人がどうやって戦うかを試行錯誤して、仕組みを作ってきました。それがこの10年です。
――柿内さんとしてはスタートアップ的な空気がお好きですか?柿内:好きですね。ちょうど今、アスコムの中で企業のマーケティングやプロモーションをサポートする事業を立ち上げまして、順調に伸びているんですけど、スタートアップのような雰囲気ですね。
この事業を立ち上げたのも、出版社が持っているノウハウをもっと活かしたと思ったからです。コンテンツマーケティング、ストーリー戦略、戦略PRなどがビジネスのキーワードになっていますが、これらは実は出版社が一番得意としているところではないのかと。
出版社がもっているノウハウが企業のマーケティングやプロモーションの課題解決につながるのであれば、それはどんどんお手伝いすべきではないかと思うんですね。そこに出版業界の新たなビジネスチャンスが埋まっている。
――実際スタートをして、手応えはいかがですか?柿内:大変ですけれど、すごく手ごたえがあります。
――今後、柿内さんがやっていきたいことはなんでしょうか。柿内:コンテンツビジネスはますます広がりをみせているし、可能性はますますあると思います。出版という強みを活用して、事業の場を広げていくのが今やりたいことであり、やっていることです。コンテンツのアウトプット先をどう作るか、ですね。だから他業界との協業をいろいろと企画しています。
話はちょっとずれるかもしれませんが、僕がいつも手本にしているのが、「ほぼ日手帳」なんです。手帳って最初にデジタルに移行すると言われていたものだと思うんです。でも、「ほぼ日手帳」は紙の手帳の価値を再発見してくれて、100人に100通りの手帳の使い方があると伝え続けてきました。新しい価値やその使い方をちゃんと伝えることができれば、魅力的に映るということを実践しているということです。
ここにコンテンツビジネスの鍵があるんじゃないかと思っています。伝えることに対して劇薬はないと思うので、その努力を積み上げていくということが一番大切なのかなと考えていますね。
(了)
■柿内尚文さんプロフィール
アスコム取締役編集部長 編集者
慶応義塾大学卒 広告代理店を経て出版業界へ。
これまで関わってきた本の多くがベストセラーになり、その累計部数は1000万部を越える。