ベストセラーを生み出す編集者・柿内尚文 その目が見据える出版社の行き先とは? (4/5ページ)
ターゲットを「絞る」よりも「広げる」。それはどういうことかというと、届ける順番は決めるけど、読者層が広がらなければベストセラーにはなりませんから、あらかじめ広がった時のことを考えて本づくりをする。だから、『「のび太」という生きかた』のような広がりが可能になるんです。
――本づくりでターゲットを広める以外で意識されていることはありますか?柿内:あとは差別化を考えないということです。よく僕の本づくりは「普通とは逆のやり方が多い」と指摘されるんですが、それは逆ではなく、時代がすでに変わっていて、前のやり方が通用しなくなっているだけなんだと思います。
差別化の話でいえば、いくら差別化をしても、もう本はそこまでちゃんと見比べられていないと思うんですね。というのも、本の選び方がだいぶ変わっていて、書店で見比べて買うというよりは、広告やプロモーションを見て、もう先にほしいものが決まっているというお客さんの方が多いと思います。だから、差別化を考えずに、この本が純粋にお客さんにとって価値のあるものになるということをとにかく念頭に置いてつくるようにしています。類書のデータや著者の実績データもあまり参考にしませんね。

柿内:2008年にアスコムは民事再生しているんですが、それですね。会社の仕組みを一から作らないといけなくなったので。
民事再生後は、信頼もない、お金もない。人も足りない。その中で僕らは弱者の戦略を取って、局地戦を展開することにしました。書店でいえば特定のジャンルでヒットを出すということです。
――そこで選んだのが実用ジャンルだったと。柿内:そうです。実用ならば戦えると思いましたし、一つの棚に絞った方が結果もでやすい。