「人生にほんの少しの彩りがあれば前を向ける」 作家・伊与原新が『月まで三キロ』で伝えたかったこと (4/5ページ)

伊与原:「星六花」と「天王寺ハイエイタス」ですね。
――「星六花」はウェブ上で期間限定で無料公開されている作品。そして「天王寺ハイエイタス」はこの中だと少し毛色が違うような印象を受けました。伊与原:そうですね。「天王寺ハイエイタス」は僕が関西出身ということで関西弁を使いたいというところから題材を選んで書きはじめました(笑)。僕の中でのイメージは、大阪でちょっと切ない話を作るとすると、大阪湾とかブルースというような単語が出てきて。
――伊与原さんの青春時代がモチーフに?伊与原:というより、おそらく大阪の人に共通するセンチメントを呼び覚ますものがそれらにあると思っています。それと科学を結びつける試みを「天王寺ハイエイタス」でやってみたということです。
――一方の「星六花」は東京の話ですね。伊与原:そうですね。都会的な話で、ツイッターでコミュニケーションをするというようなシーンもあります。
――SNSそのものを題材にした小説も多いですが、完全に小道具で使っているというか。伊与原:若い人は分からないですけれど、僕自身は、SNSは小説の小道具にしづらいと思っていたんです。ただ、東京の話ですし、今の男女がコミュニケーションを取るうえで避けて通れないものかなと思いまして。
――「エイリアンの食堂」は研究学園都市・筑波を舞台に、食堂を営む親子と不思議な雰囲気を纏った女性の宇宙を巡るお話です。伊与原:はい。女性のニックネームもプレアさんですからね。このプレアさんに関してはモチーフはいなくて、想像でつくりました。面白い人を造形しようと思っていたら、ああいう人物像になりました。気に入っています。