「人生にほんの少しの彩りがあれば前を向ける」 作家・伊与原新が『月まで三キロ』で伝えたかったこと (5/5ページ)

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――そして、この短編集の着想にもなった「アンモナイトの探し方」。

伊与原:先ほど言ったような経緯がありまして、タイトルが先に決まりました。そして、アンモナイトのコレクションをしている研究者のおじいさんが浮かんできて、あとは僕の中で北海道でアンモナイトを採掘しているシーンが夏と結びつくというか、夏っぽいなと。だから、舞台を夏休みにして、都会から来ている子どもとおじいさんの話、と。

――その2人はいずれも、心にもやもやしたものを抱えています。

伊与原:書き始めの頃は子どもとおじいさんの爽やかな出会いみたいなことも考えていましたが、短編集の全体のテーマが固まってきたときに、それぞれの人生に屈折があったほうがいいと思ったんです。おじいさんにも子どもにも悩みがある。子どもなりに人生の局面に向き合っているという状態、ということをストーリーに織り交ぜました。

――地質にまつわるお話ですが、伊与原さんは子どもの頃から地質学がお好きだったんですか?

伊与原:特に鉱物少年とか、化石が大好きというのはなかったです。ただ、科学は好きで、漠然と物理学がやりたいと思っていましたし、フィールドワークにも憧れがありました。

――全編を通じて読んでいない人にも説明しやすい小説だと思いました。

伊与原:確かにそうかもしれません。僕自身はうんちくが入っている小説が好きで、こんな面白いことがあるんだよということを、いかに説教臭くなく上手く散りばめるかということは書く上での課題にしてきたのですが、今回はそのうんちくの要素を減らしつつ、科学の知識が出てくる必然性を考えながら書きました。そういった感想をいただけたということは、それが上手くいったのだと思います。

(後編はこちらから)

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