さやわか、名探偵コナンのように平成の真実を解き明かす (4/8ページ)
天才的な高校生探偵だった工藤新一が、何も知らない小学生のフリをしながら、身の回りで起きた事件をさりげなく解決し、さらに黒ずくめの組織の謎に迫る。これが作品のメインストーリーです。
このメインストーリーにしたがって『コナン』の世界は進行します。しかし、読んでいるうちに、やがて誰もが気づくことがあります。というのも実は、この世界は、時間の経過がとても遅いのです。
どのくらい遅いかというと、2014年に発売された83巻「水色の想い出」の中で、蘭がこの物語の第1話が開始する直前の頃を回想するシーンがあります。そこでの蘭のモノローグは次のようなものでした。
「あれから1年もたってないのに随分昔の事のよう…」
ちなみにこの回は、『少年サンデー』誌上では「連載20周年記念特別シリーズ」として掲載されたものでした。つまり「連載は20年も続いているのに、作中時間はまだ一年も経過してないのって、不思議だよね」と、なかば自虐ネタのように、ツッコミしているわけですね。
一年も経っていないはずなのに、作中では何度も四季が移り変わっています。そしてその短期間に、コナンたちは何百回も、殺人事件という非日常的な出来事に巻き込まれます。『愛蔵版 ジュニア空想科学読本』第2巻(柳田理科雄、汐文社、2017)という本によれば、『コナン』の世界では2日に1回は事件が起きている計算になるそうです。つまり、ほとんど毎日、身の回りで誰かが死に、それを解決し続けるのが、『コナン』の物語なのです。
ただ作者の青山剛昌は、前述の「連載20周年記念特別シリーズ」の時と同じく、連載が長期化したがゆえの「不都合な真実」を隠そうとはしません。
たとえば事件を担当することの多い、警視庁捜査一課の目暮警部は、毛利小五郎や、時にはコナンのことを、行く先々で死体に出くわす「死神」呼ばわりしています。おかしな出来事に合理的な説明をつけるのは難しいですが、「変だねえ」と言いつつ、そこはフィクションとして受け入れてしまおう、という態度なのです。
もちろん、時間の流れが止まっているかのようなフィクションは、他にもあります。