田中角栄「怒涛の戦後史」(1)父・田中角次(上) (3/3ページ)

週刊実話



「あの一言は、いまも私の耳に残っている。自分の父がほめられたのではなく、その不運を指摘されたつらさだった。その後の私は、人にカネを貸してくれと頼まれたとき、できないと思ったらキッパリ断わるし、貸すとなったら返ってこなくてもいいという気持ちで、一言も言わず貸すことにしている。この考え方は、父のことを言われたあの瞬間に培われたものだと思っている」(『私の履歴書』日本経済新聞社)

 父の生業は好転せず、二田尋常高等小学校開びゃく以来の秀才だった田中は、自ら上級学校進学を断念、15歳で土工の仕事に出ることになるのである。

 後年、田中がものした文章などに、父・角次へのうらめし気なそれは、一行たりとも出てきていない。
(文中敬称略/この項つづく)

***********************************************
【著者】=早大卒。永田町取材49年のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『愛蔵版 角栄一代』(セブン&アイ出版)、『高度経済成長に挑んだ男たち』(ビジネス社)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
「田中角栄「怒涛の戦後史」(1)父・田中角次(上)」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る