連続芥川賞候補 古市憲寿が「小説」を書く理由 (2/3ページ)
できなくもないのでしょうが、どうしても数字や個別の事例の話になってしまいます。もちろん、それが文学に近づくこともありえるはずですが、やはり小説という形に乗せる方が届く感情や気持ち、主張はあると思っています。
――著述活動だけでなくテレビ出演されたりと幅広く活動されていますが、ご自身の中で「これが本業」というものはあるんですか?古市:どれもそこそこに楽しいので、どれが本業というのはないですし、優劣もありません。嫌なことは一つもしていなくて、やりたいことしかやっていないですね。
――来た仕事は断らないスタンスですか?古市:いや、めちゃくちゃ断ります(笑)。テレビでもそうですし、執筆もそうです。気乗りしないものはやらないですね。そこは自分の気持ちを大事にしています。
急に元気になったり急に悲しむことができないように、感情ってなかなかコントロールしにくいものです。だからこそ、自分が心地いいと感じる仕事を選んでやるようにしています。
――ライフワークのようなものがあったら教えていただきたいです。古市:子供の頃から図鑑を作るのが好きで、小学生の時に色々な魚類図鑑を買ってもらって、それらをつなぎ合わせたり、文章や絵を加えたりして、自分なりの「サメ図鑑」を作ったことがあります。当時、サメに特化した図鑑はあまりなかったんです。
膨大な資料を手にして、いろいろな人に話を聞いて、そこから一つの作品を作るということでは、評論や社会学の本も小説も、当時の活動の延長線上にあると思っています。その意味では小説もそうでない本も僕にとっては地続きのものなんです。
――小説を発表するようになってから、作家のお友達はできましたか?古市:小説を書くようになる前から、朝井リョウさんとか、西加奈子さん、島本理生さんとか、交流がある作家の方はいました。そもそも僕が好きな人狼というゲームを教えてもらったのも、そうした作家コミュニティだったんです。いつの間にか、みんなは止めてしまいましたけど(笑)。これまで出した社会学の本を含めて、お互いの作品の話はあまりしないですね。