「自分はリア充で、小説家としてはイロモノ」 早見和真が考える作家としての自分の位置とは (4/5ページ)
それがたまたま選んだ松山で成功して、街を歩いているとほぼ振り向かれるようになりましたし、街にコミットする一人の小説家を応援するようなムーブメントを作ることができた。
――愛媛新聞には童話の連載もされていましたよね。早見:そうです。去年、『かなしきデブ猫ちゃん』という童話を今治出身の絵本作家のかのうかりんさんと組んで連載しました。それは愛媛県民全員が知っている物語を自分の手で生み出したいと思ったからで、実際にそれに近い結果を得られていると思います。
絵本って3000部売れたらヒットらしいんですけど、今はもう1万3000部ですね。また、愛媛銀行のキャッシュカードとコラボレーションもしたりしていて。自分にとっては全く儲からない座組みなんですけど、物語を読むとっかかりを自分の手で作れているイメージはあるんですね。
小説家は小説を書いているだけでいいと言う編集者もいますが、凡夫である自分はひたすら街にコミットして、物語を紡ぐということをやれるだけやってみようと思っています。これは純粋に試してみたいなと。
――では、松山を舞台にした本格的な小説は書かないのですか?早見:これは書きます。それを置き土産に次の土地に行きたいなと。2020年早々に『野性時代』の方で「八月の母」というタイトルで始める予定です。
――では、繰り返しになりますが『ザ・ロイヤルファミリー』をどんな人に読んでほしいと思いますか?早見:面白い小説を読みたいという人に読んでほしいです。この小説は、早見和真という小説家の名刺代わりの一冊であり、これほど言い訳ができない小説はないと思っています。批判があればそれを真正面から受け止めるし、結果が出なかったら身の振り方を考えないといけない。そのくらいの気持ちです。
ジャンル小説が全盛の時代に、ど真ん中の中間小説を書きたかった。僕自身が好きで読んでいた本当の中間小説を書いたつもりです。
――野球で言うならば、早見さんの一番のストレートを投げ込んだ感じですね。早見:まったくもってそうです。