仏教者の中でも大人気の真言宗開祖 弘法大師・空海の即身成仏と現実肯定の哲学 (1/4ページ)
仏教者の中でも真言宗の開祖 弘法大師・空海(774〜835 )は非常に人気がある。真言宗自体は浄土真宗など鎌倉仏教系に比べ規模は小さいが、空海の知名度の人気は圧倒的である。空海の思想とは、密教の本質とは何か。
■空海こそ日本オカルト・スピリチュアル界の代名詞
80年代のオカルトブームは空海・密教熱に火をつけた。「孔雀王」「帝都物語」など、法力を身につけた密教僧が呪文(真言)と手印を駆使して悪霊や悪しき呪術師と戦う能力バトルは漫画や小説の世界ではひとつのジャンルを成している。世紀末ブームと相まって密教のもつ神秘的なイメージは、閉塞感が漂う現実の世界を変革してくれるような幻想を提供してくれたのである。
また近年ではスピリチュアルブームの波に乗り、癒しを求める女性にも人気を博している。「高野山カフェ」などの催しは連日満員、美術館で空海展や密教美術関係の企画展を行なえば大盛況である。
最近こそ陰陽師・安倍晴明に押されがちであるが、空海こそ日本オカルト・スピリチュアル界の代名詞である。実はそのような評価は近年までの識者らの評価とあまり変わっていない。明治以降ごく最近まで空海も密教も異端の仏教、オカルト扱いであった。
■貴族仏教・祈祷仏教という低評価だった空海の真言密教
空海の開いた真言密教と最澄(767〜822)の天台教学の平安仏教は大きく2つの点で近代仏教学からは不当な評価をされていた。
1つには貴族仏教とされたことである。確かに彼らは国家鎮護のために祈祷、つまり呪い(まじない)を行った。貴族にとりいり、民衆から遠ざかった御用仏教だとされたのである。
2つめはその祈祷が近代の仏教関係者から嫌われた。仏教を高度な哲学として好む明治のインテリは、護摩を炊いたりなどのまじない師もどきの所業として見下した。中でも鈴木大拙(1870〜1966)は、日本人の霊性(宗教的感性)は鎌倉仏教から始まったとし、空海や天台宗開祖・最澄の平安仏教やそれ以前の奈良仏教にはなかったと手厳しい。