人を斬る「痛み」と武人の覚悟!「日本書紀」に登場する豪族・物部目の武勇伝を紹介【下】 (4/4ページ)
(※一説に、猪名部とはその地に住む工匠集団=部民を指すとも言われます)
猪名部は物部目に武功の恩賞として下賜されましたが、公明正大な物部目ですから、身体を張って守ってくれた大斧手をはじめ、家臣たちにも十分な褒賞を分かち与えたことでしょう。
この物部目と菟代の違いは、ひとえに人を斬る「痛み」に対する覚悟によって表れたものと言えます。
敵は斬らねばならないが、自分が痛いのは嫌だ、絶対に傷つきたくない……そういう考えではあと一歩を踏み出せず、結局怯んで後れをとるか、あるいはむざむざ討たれる憂き目を見ることになります。
「……死なんと戦えば生き、生きんと戦えば必ず死するものなり……」
※上杉謙信「春日山城壁書」より。
まして逃げ出したところで、どこでどんな道を生きていこうと言うのでしょうか。卑しくも武に生きる上は、眼前の敵を倒すよりほか道なきものと突き進んでこそ、運も開けて来ようもの。
どんな強敵を相手にしようと、決して逃げ出すことなくその「目」で見据えて勝機をものにした物部目の生き方は、武人の鑑として今に伝えられています。
【完】
※参考文献:
福永武彦 訳『現代語訳 日本書紀』河出文庫、2005年10月5日
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan