全損保険を法人成りしたらどうなるかを元国税の税理士が解説 (1/2ページ)
個人事業を法人成りする場合、個人事業で使っていた資産を法人に譲渡したと取り扱われます。この場合の譲渡金額は、土地など一定のものを除き、原則として法人成り直前の個人事業における資産の帳簿価額とされています。帳簿価額と譲渡価額がイコールですから、土地など一定のものを譲渡する場合を除き、法人成りの際譲渡所得を申告することは原則としてありません。
■倒産防止共済掛金などはどうなるか?
実務上よく問題になることの一つに、倒産防止共済掛金に個人事業で加入していた場合、それを法人成りで引き継ぐ場合はどうなるか、ということがあります。倒産防止共済掛金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する経営セーフティーネット共済の掛金で、取引先事業者が倒産したような場合の資金繰りに対するリスクヘッジの一環で支払うものです。この掛金は、毎月20万円を上限に、総額800万円までその全額を経費にできるため、高い節税効果もあります。
ここで問題になるのは、全額を経費にできるため、直前の帳簿価額がないということです。帳簿価額がないため、法人成りの際、いくらで譲渡することになるか疑問があります。この点倒産防止共済掛金に限ったことではありませんが、保険などは原則としてその時点での解約返戻金が時価であるという考え方があります。このため、倒産防止共済掛金についても、その時点での解約返戻金で譲渡したという処理になります。
■全損の保険も同様に
この点は、個人事業において、従業員を被保険者とする定期保険に加入しているような場合も同様です。一定の従業員を被保険者とする定期保険は、個人事業においても、福利厚生の一環としてその支払保険料の全額を経費とすることが出来ます。このような保険料の全額が経費となる保険について、同様に法人成りで法人に移転する場合は、その時点での解約返戻金で譲渡した、という処理を行うことになります。
結果として、帳簿価額が零のものを解約返戻金相当額で譲渡する訳ですから、解約返戻金相当額の全額が課税されます。