道尾秀介インタビュー「一番面白いと思えるのは、自分自身がつくったもの」 (2/3ページ)

日刊大衆

生まれてから一度も仏像を見たことない人が、いきなり巨大伽藍を目にしたような。最初から超一級品に触れた、という衝撃でした。

■「あえてそのスイッチを押さない」

 いつか作家になると決めたのは、19歳のときです。きっかけは、自分で小説を書いてみたこと。今から思うと、文章も稚拙だし、小説としてのクオリティも低いんですけど、ただひとつ、僕の好みには100%合致していた。

 自分が読みたいものを書いたんだから当たり前なんですけど、一番面白いと思えるのは、自分自身がつくったものだということに気づいたんです。

 音楽も同じです。2月にリリースしたデビュー曲『HIDE AND SECRET』は、2年前に刊行した小説『スケルトン・キー』と世界観がリンクした楽曲なんですけど、僕の小説を題材にした曲を作ってくれませんかと人にお願いしたって、誰も作ってくれないだろうし、それがどんな曲であっても絶対に100%満足はできない。だったら、自分で作ろうと(笑)。

 音楽と小説の「ひとりメディアミックス」です。小説を読んだ人が曲を聴けば、読んだ人にしか味わえない感覚を味わってもらえるし、逆に、先に曲を聴いたという人には、小説を読んだときに、曲を聴いていないと味わえない感覚を覚えてもらえるはずです。

 作家になって16年。いろんな作品を書いたり、読んだりしているうちに、感動のスイッチがどこにあるのか、なんとなくですが、分かるようになってきました。

 でも僕が大事にしているのは、あえてそのスイッチを押さないこと。新しい価値観を見つけて、「えっ、こんなところにスイッチがあったのか」と驚いてもらえるような作品を書き続けることです。それは、小説も音楽も一緒です。やりたくないことは、やらない。書きたいことだけを書いて、作りたい曲だけを作っています。幸いなことに、書きたいと思う小説のネタも、作りたい音楽も、頭の中にはまだまだたくさんあります。

 きっと、やりたくないことをやったほうが、今よりお金は稼げると思うけど、飽きっぽいし、頑固なので(笑)。

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