エビの性別操作技術で養殖を完全に持続可能なものに(イスラエル) (4/4ページ)
たとえばEnzootic社のシステムなら、日々水槽の水を1%だけ交換すればいい。
しかも排水として捨てられる水は、作物の灌漑(かんがい)にも使うことができる。これはイスラエルやアフリカのような太陽の恵みはあっても、水には乏しい地域にとってはとても大きなメリットだ。
こうした環境負荷の小ささは、批判があるゆえにこれまでエビ養殖に手を出しにくかった先進国からも注目されており、カナダやアメリカなどにはすでに商業的に経営されている屋内養殖施設が存在する。
Enzootic社は、エビだけでなく魚も含め、養殖の未来は集中的な屋内システムにあると考えており、その普及を可能にするのがメスだけを作る技術だと述べている。
・持続可能なエビ養殖へ向けた今後の課題
現実には、淡水エビの養殖にはいくつか解決すべき課題もある。
そのうち最大の問題とされているのは、エビのエサとして利用されているペレットに、大量の魚肉と魚油が含まれていることだ。
その原料は、人間の食用とするには商業的な価値のない天然の魚だ。そのため、屋内養殖はいわゆるFIFO(給餌量に対する生産量)を改善するだろうが、雑魚の漁獲量は相変わらず持続可能なペースを上回ったままとなる。
Enzootic社もこの点を認識しており、大豆、昆虫、海藻、パルプなどを利用した代替エサの研究を行っているとのことだ。
こうした研究が実れば、いずれ完全に持続可能なエビ養殖が完成するかもしれない。そのとき、どれだけエビを食べようとも、それが環境破壊につながっているのではという罪悪感を抱かなくても済むようになる。
References:Can gender-bending Israeli superprawns help feed the world? | Ars Technica/ written by hiroching / edited by parumo