怒り狂った老婆が包丁で!福島県に伝わる世にも恐ろしい昔話「三本枝のかみそり狐」【下】 (4/6ページ)

Japaaan

そもそも何があったのか、事情を話しては貰えぬか……」

老婆は涙ながらに、娘を狐だと言い張って孫を焼き殺した彦兵衛の悪行を語ります。御本尊の裏でそれを聞いていた彦兵衛は、いつ住職が心変わりして、自分の居場所を明かしはしないか、気が気ではありません。

しかし、住職は老婆の話を最後まで聞き終えると、穏やかにこう諭しました。

老婆をやさしく諭す住職。

「……確かに、その男の所業は罪深き過ちではある。しかし、仇討ちの血に穢れたそなたの腕に抱かれることを、冥土のお孫さんは喜ぶじゃろうか?」

「それは……」

一通り訴え散らして少し落ち着いた老婆は、涙をすすりながら口ごもります。

「天網恢恢、疎にして漏らさず。その男の罪は必ず仏様が罰して下さるゆえ、今夜のところは帰って娘さんを慰めておやりなされ。明朝、拙僧が供養に参ろう」

「……はい……」

あれほど怒り狂っていた老婆がすっかり大人しくなってしまったところを見ると、よほど徳が高く、日頃から慕われているのでしょう。

彦兵衛の出家

何はともあれ助かった……胸をなで下ろした彦兵衛は、老婆が立ち去ったのを確かめた上で、御本尊の裏から這い出します。

「お陰様で、助かりました」

すっかり安心した彦兵衛はお礼を言いましたが、住職は厳しい顔で訊ねます。

「さて……あの者の申すことは、真か?」

「……相違ありません」

いくら豪胆を気取る彦兵衛でも、仏様の前で嘘をついたらどうなるかくらいは知っています。

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