実はスゴすぎるアリの社会 「それぞれの持っている能力が最大限引き出されて達成」 (2/5ページ)
――それは一体どういうことでしょうか?
村上:一般的なアリ社会のイメージは統治者の女王アリが指令を出し、それに基づいて働きアリが動くというものだと思います。でも、実際、女王アリは何も指令を出さず、敵が襲ってきたときに全員止まれと警告を出すくらいで、基本は産卵に特化している機能体に過ぎないんです。
一方で、働きアリは個々である程度の判断基準を持っていて、いろんな環境下で判断して動き、音や匂いで情報共有をしているんですね。だから、コントロールされていると一見見えるような社会ですが、実はトップダウン型でもボトムアップ型でもない、一匹一匹の個体の持っている能力が最大限引き出されて達成されている社会なのだと思います。
――アリの社会構造を分析していくと、社会学のような他の学問にも応用できそうですね。
村上:そうだと思います。社会学だけでなく、数理学の世界でも「巡回セールスマン問題」という組み合わせの最適化問題を解くのに、蟻コロニー最適化の手法が使われたりしています。その仕組みが物流や人工衛星の軌道にも応用されていて、今後もアリが作り出しているシステムが人間社会に活用できるということは十分にありえますね。
――まさにアリの研究は未来につながる研究です。
村上:日本は、こういう実学からは少し遠いけれど、ブレイクスルーを生むかもしれない研究には寛容なんです。他のアジア圏はもっと実学を要求されます。そこは日本社会にまだ余裕があるのかもしれませんね。
■人間とアリの文化的な関係――食文化について――本書の中で村上先生がハキリアリの巣の中にある菌糸状のキノコを食して「ただただカビ臭く、まずい」と感想を吐露しています。アリを研究する上で、アリ自体を食べるということはあるのですか?
村上:あります。