交錯する運命と冒険『天風』に込めた作者の思いとは (1/4ページ)

新刊JP

『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)
『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)

『宝島』(スティーヴンソン)、『海底二万マイル』(ヴェルヌ)など、冒険小説は何歳になっても、私たちの心をつかむ。もしかしたら、私たちには「知らない場所を、自分の知力と体力を頼りに旅してみたい」という本能的な欲求があるのかもしれない。

『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)もまた、私たちの奥深くに刻まれた旅心を刺激してくれる小説だ。「神子」にまつわる伝説と、その伝説に魅せられた人たちが織りなす人間ドラマと、どこにいるかもわからない人を探す旅。それは、インターネットやSNSが普及した現代に生きる私たちにはもうできないものなのかもしれない。

今回は著者の小山結夏さんにインタビュー。この物語に込めた思いについてお話をうかがった。その後編をお届けする。

■様々な人間の運命が交錯する物語 ラストは…

――小山さんが一番思い入れのあるキャラクターについて教えていただきたいです。

小山:一番にとなると理京です。理京は自分と近いようで、真逆に遠い理想の人間像でもある存在です。

闇を抱えながらも、和氏やアルトのような旅で出会う人たちの心を救っていく場面では、理京の人柄の良さが表れており、でもその一方で、決してその場の空気で甘い事を言わない厳しさも兼ね備えています。

架空の人物ですが、こんな人が傍に居てくれたら、間違えずに歩いて行けそうな気さえしてくるキャラだと思います。

この物語は風丸と琴芽だけが主人公のように思われがちですが、実は理京を軸に描かれています。その部分にも意識して頂けると、物語に一層深みが増すと思います。

理京の人の良さが表れているもう1つに、全てを失う原因となった神子(風丸)に対して、恨んでもいい存在だったはず。だが理京は逆に風丸に救いを求め、希望を抱いていった。そして守ろうとしたのです。また、純粋な風丸も、そんな理京の心情とは裏腹に、理京を頼りにしている。そういった深くせつない部分も感じ取って頂けると、著者としては本望です。

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