交錯する運命と冒険『天風』に込めた作者の思いとは (2/4ページ)
――自分の過失で神子が封印された壺を失ってしまった理京が最後の最後で救われたのが個人的に印象的でした。小山さんとしては、執筆しながらこの作品のラストシーンをどのようなものにしようと考えていましたか?
小山:実はラストシーンは早い段階で思い浮かんでいました。そこから物語を拡げていったと言っても過言ではないくらいに。自分の過ちにより全てを失ったと信じ込んだ理京は、そこから天罰に捉われ、自分を責め続けて生きてしまいます。
しかし、感情すら失っていた理京は、風丸に出会い、そこに最後の望みをかける事になります。せめて、自分の行った行為が救われるよう、風丸は災いをもたらす生き物ではないと信じたかったのです。そして、期待どおり、風丸が優しい者だと知った理京は、風丸を愛しむようになります。風丸が守ろうとした琴芽も一緒に。だが天は、その二人をも理京から奪おうとした。なぜ自分ではなく、大切なものばかりが奪われるのか。理京は遂に天に怒りを覚えます。そして・・・。
ラスト、今までの出来事を振り返った理京は、そこで伝説がでたらめであった事と、自分が信じてとらわれていた物は、全て思い込みだったのではないかと悟ります。そして、ようやく天罰から解放されていくのです。
理京は幸せになれたのだろうか?そして、玉がもたらした物は、幸福か災いか?そこに答えはなく、人生観というものは、個人の捉え方によって変わってしまうものだ、という考えさせられるテーマを残して物語は終わります。
――神子としての宿命を背負っていた風丸も、ラストで救われることになります。彼の宿命といえば「玉」ですが、この作品における「玉」、あるいは「玉に宿命づけられた風丸・龍子という存在」は、私たちが生きる世界の何かを象徴的に書いたものでもあるのでしょうか?
小山:人生で大切な物はと聞かれると、お金と命と答えるかもしれない。本編では命の尊さの方が主に描かれている。
風丸は体の中に命の玉がある事により、自身は生きる為に生まれて来たんじゃないと、自分を責めてしまいます。