何で女性にその名前?生涯無敗を誇った剣豪美女・園部秀雄の武勇伝【上】 (2/4ページ)
「私、剣術を学びたい!」
女の子がそんな荒事に手を染めるんじゃない……もちろん陽三郎は猛反対しますが、それくらいで諦めるような「たりた」ではなく、実家を飛び出して佐竹に弟子入りを申し出ました。
「いやぁ、それはお父上の仰ることの方がごもっともかと……」
嫁入り前、しかも決して家柄も悪くない娘さんを、こんな稼業に進ませるのは忍びない……鑑柳斎も当惑して「悪いことは言わないから」と実家に帰るよう説得しますが、それで大人しく従う「たりた」ではありません。
「ひとたび志した道を、挑むことなく諦めるなど、断じて嫌です!」
……剣術への情熱に根負けした鑑柳斎は「たりた」に直心影流(じきしんかげりゅう)薙刀術を伝授。一度入門した以上は少女だからと手加減せず、厳しい修行を課しましたが、決して音を上げることなく、2年の歳月が流れました。
男に負けない実力を備え、師匠から「秀雄」の名を授かる明治二十一1888年のある日、19歳となった「たりた」は、鑑柳斎に呼び出されました。
「『たりた』よ……そなたに、印可状(※免状の一種)と新しい名を授ける。これからは『秀雄』と名乗るがよい」
「ありがとうございます……しかし、秀雄とは男性の名ではありませんか?」
「いかにも。雄(おとこ)に秀でると書いて秀雄……そなたが男にも負けぬ実力を身に付けたことを証(あか)す名前じゃ。