『全裸監督』脚本家・山田佳奈が描く「親の介護・相続・セックスレス…令和の家族と“正義”」 (3/5ページ)

日刊大衆

家族って切っても切れない関係なのに、半分も知らないなんて他人だなぁ、とか考えていたら、家族を描くって、もしかしたら自分と向き合うことかもしれない、と思ったんですよね」

 小説では、認知症の父親がある日、失踪する。非正規雇用でブラブラしている兄と人一倍神経質な姉、そんな姉を支えたいと気を遣って生活する義兄が同居する実家に、末っ子の僕は仕事をやめて帰ってくる。そもそも過去の父の不倫が原因で母が出ていき、家族はバラバラになっていた。兄は「父は自分の意志で愛人のところにいったのかもしれない」と勘繰り警察にもいかず、姉は「私が目を離したせいだ」と自分を責めながら、何も行動を起こさない兄に苛立ちを募らせている。そして、僕は「めんどくさい」という思いを抱えながら、それでも自分の感情と折り合いをつけられずにいる。

「フィクションで書いてはいますが、それでも私は家族というのを自分の家族でしか知らないので、知らず知らずのうちに実体験が作品に投影されていることはありますね。作中のいちごを潰して家族で食べる描写とかはまさにそうです」

■SNS上での対立をなくすためには……

 小説のなかで、認知症の親の介護、兄は非正規雇用、姉夫婦は親と兄が同居していることによるセックスレス、父の不倫で母が出ていき相続についてものちのち問題化する可能性がある。父の失踪を通して、家族の間にこれまでも横たわっていたものの見えなかった、あるいは見ようとしてこなかった様々な問題が喫緊の話として浮上してくる。

「小説の中に出てくるいろいろな問題って、たぶんニュースで見たりとか、新聞で読んだりとかしてみんな知識はある。ただ、実際に自分事にならない限り現実感がないんですよね。だから実際に自分の身に振ってかかると小説に出てくる兄弟たちのように狼狽えてしまう。やっぱり当事者にならないとわからない感情とか、言葉があると思うんです。私も2年前に母親をガンで亡くしていますが、そのときまでガンで親を亡くした人の気持ちなんてわからなかった。30代になってもまだまだ知らない感情ってたくさんあるんだって思いましたね。

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