何かを選択する時に脳の神経細胞が関与。脳に電気を流すことで選択が覆る(米研究)
その選択はあなたが決めたもの?脳に電気刺激を加えると選択肢が変わる/iStock
あなたが選択に迫られたとしよう。どの服を着て出かけるかでも、夕食に何を食べるかでも何でもいい。この決定は何によって下されているのか?
実は脳の神経細胞によるものだ。脳内ではそれぞれの選択肢がせめぎあっており、最終的に選ばれるのは、神経細胞がもっとも強くアピールしたものだ。
ということは脳の神経細胞に電気的な刺激を与えることでその選択肢も変わっていくという。
『Nature』(11月2日付)に掲載された新しい研究では、神経細胞が発火することで選択肢が持つ価値が表現され、それが最終的な判断を左右していることを明らかにしている。
・人間は何を基準に選択するのか?
18世紀、ダニエル・ベルヌーイ、アダム・スミス、ジェレミー・ベンサムは、人間は与えられた選択肢の価値を主観的に計算し、それを比較することでどれを選ぶのか決定していると考えた。
それは量かもしれないし、質かもしれない。あるいはそれを得るためのコストや実際に入手できる可能性といったことかもしれない。
中には客観的に測ることができるものもある。だが、そこから感じられる価値はあくまで主観的なものだ。そして、そうした主観的に感じられる価値を比べることで、選ぶべき選択肢が最終的に決定される。
これは経済学理論の基礎的な土台となり、今にいたるまでそれを前提として研究が行われているが、これが仮説ではなく現実であると証明されたのは、2006年になってのことだ。
アメリカ、ワシントン大学に所属するカミロ・パドア=スキオッパ博士らによって、提供された物に関する主観的価値の情報を持つ神経細胞が「眼窩前頭皮質」にあることが発見されたのだ。
動物を使った実験では、それぞれの選択肢に対応する個別の神経細胞グループがあり、その発火が速いほどにより魅力的に感じられていることが明らかにされている。
だが、この研究では、最終的に選ばれた選択肢が、本当にそうした脳内の価値に基づいているのかまでは実証されなかった。

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・神経細胞に電気刺激を与えることで選択肢が変化
そこで今回、パドア=スキオッパ博士らは、そうした神経細胞が持つ価値と実際に選ばれた選択肢に本当に関係があるのかどうかを明らかにしようと試みた。
その実験は、まずサルに2本の飲み物のうちから1本を選ばせることから始まった。サルに提供された飲み物は、それぞれ異なる量で、中身もレモネードやリンゴジュースから塩水までさまざまだった。
普通、サルには味の好みがあるものだが、量が少ないよりは多いものを選ぶ傾向もあるので、どちらを選ぶのかはそう簡単には決められない。いずれにせよ、これを繰り返し行い、その結果を記録した。
次にサルの眼窩前頭皮質に電極を取り付けて、それぞれの選択肢の価値を表している神経細胞を刺激。それがサルの選択にどのような影響を与えるのか観察した。
だが刺激には弱いものと強いものの2種類があった。
弱い電流で神経細胞が刺激された場合、サルにしてみれば、提示された飲み物がより魅力的に見えるということになる。
そして、この予測を裏付けるように、サルは刺激で脳内価値が引き上げられた飲み物を選ぶようになったという。
だが強い電流で刺激すると逆効果になる。この場合、神経細胞が撹乱されて主観的な価値をうまく表せなくなってしまう。するとサルは、それによって価値が感じられなくなった飲み物を選ばなくなった。
・脳内の神経細胞があなたの選択を決めている
「こうした選択肢に関しては、サルの脳と人間の脳はとてもよく似ています」と、パドア=スキオッパ氏は解説する。何かを選ぶたびに、脳内では選択肢を代表する神経細胞がアピール合戦を繰り広げているのだ。
「レストランでの注文、投資判断、選挙での投票など、同じ神経回路が人間の選択肢にも働いていると思われます。仕事や結婚など、一生に関わる選択であっても、おそらくこの回路が利用されているでしょう。」
神経細胞に電気刺激を与えることでその選択肢が変えられるというのなら、医療分野で役立つことも多いだろう。精神疾患のある人に明るく望ましい選択をさせることが可能となる。
だがもし逆に悪用されたら大変なことになりそうだ。
References:medicine/ written by hiroching / edited by parumo