「理想の女性」にただ一つ欠けていたもの…源氏物語の正ヒロイン「紫の上」の憂鬱【下】 (5/6ページ)
どんな美女にもまさる姫君!「源氏物語」ヒロインで極度のコミュ障・末摘花の恋愛エピソード【一】
すべてが完成するかと思った最後の1ピースによって、これまで築き上げてきたすべてが崩壊していく……そんな光源氏の深い業が、『源氏物語』第一部におけるクライマックスと言えるでしょう。
それでもやっぱり、光源氏を愛していたこれまで、どんなに光源氏が浮気をしようと、自分だけが揺るぎない一番であると信じていたから許せたのに……紫は裏切られたショックのあまり病床に伏せってしまい、とうとう出家を願い出ます。
現代なら出家しても、ただ頭を丸めたり、女性なら髪を下ろしたりする意外は俗人と変わらぬ暮らしぶりの者も多いですが、当時の出家とはそんな中途半端なものではなく、「俗世のすべてを断ち切る」ことを意味していました。
(※現代でも、建前上はそうなっているのですが)
すると、光源氏はこれまで散々浮気をしてきた自分の所業も棚に上げて「嫌だ!私を見捨てないでくれ!」となりふり構わず引き止めます。
あんなに頼もしかった(今でも外面上は権勢の絶頂にいる)光源氏が、ただ自分(にそっくりな藤壺)が恋しくて、子供のように泣きすがっている……そんな様子を見捨てるに忍びず、紫は最期まで出家を思いとどまるのでした。
こうして見ると、今や二人をつなぎとめているのは、単なる憐みや同情のようにも思えます。しかし、本当にそれだけだったのでしょうか。
