「理想の女性」にただ一つ欠けていたもの…源氏物語の正ヒロイン「紫の上」の憂鬱【下】 (6/6ページ)
終生こよなく愛し合った紫と光源氏。永い歳月が、二人を比翼の夫婦(めおと)にした(イメージ)。
たとえ最初の動機が何であれ、彼が孤独の中から連れ出してくれたのは、藤壺中宮ではなく、この自分。
彼がやさしく指に流し、丹念に梳(くしけず)り、愛でてくれたこの髪は、他の誰でもない自分の髪だし、それは目も肌も手指も何もかも、すべて同じ。
そして何より、他の誰でもない自分こそが誰よりも光源氏を愛していたし、かつて須磨から帰還した彼を抱きしめた時の喜びは、あれから少しも色褪せてはいない。
誰が愛してくれるとかくれないとか、立場がどうとかこうとか、そんな事は一切関係なく、ただ心の底から自分が光源氏を愛し、共に生きて来られた日々こそ真実であり、すべてだったのだ。
……と思っていたかは察するよりありませんが、互いが互いを求め、心より愛し合った二人の姿は、まごうかたなき「比翼の鳥」そして「連理の枝」であったと言えるでしょう。
【完】
※参考文献:
鈴木日出男 編『源氏物語ハンドブック―『源氏物語』のすべてがわかる小事典』三省堂、1998年3月
池田亀鑑『源氏物語入門』社会思想社、2001年4月
林田孝和ら編『源氏物語事典』大和書房、2002年5月
山本淳子『平安人の心で「源氏物語」を読む』朝日新聞出版社、2014年6月
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