「理想の女性」にただ一つ欠けていたもの…源氏物語の正ヒロイン「紫の上」の憂鬱【下】 (3/6ページ)
絶大なる愛情を受けた紫の上だが、その地位は光源氏の愛情による不安定なものだった(イメージ)。
もちろん、そんな事で光源氏の愛情はいささかも損われませんが、紫の立場は光源氏からの愛情によってのみ支えられている脆弱なものでした。
子供については後に明石の御方が産んだ女児(明石の中宮)を入内まで育てさせてもらったものの、家柄についてはどうしようもありません。
その一方で、光源氏も悩んでいました。
「紫の上には何の不満もない。むしろ彼女以外のパートナーは考えられない。しかし……」
カムバック以降、どこまでも出世した光源氏は准太上天皇(じゅんだじょうてんのう。条項に准ずる待遇)となり、この世の栄華を極めましたが、あと一つだけ足りないものがあります。
「我が身分に相応しい正室」
そこで迎えてしまったのが、朱雀帝(すざくてい。実在の朱雀天皇とは別)の第三皇女である女三宮(おんなさんのみや。本名不詳)。帝たってのご所望でもありました。
内親王(を正室に持つ)というブランドさえあれば、我が権勢は完全無欠なものとなる……しかし、私の愛情だけを恃みに生きてきた紫の上が、どれほど傷つくことだろう……もしこれだけであれば、光源氏は間違いなく紫の上への愛情を選んだことでしょう。