「日本はすごい国」論にひそむ危険な兆候 (2/4ページ)

新刊JP

なぜなら声を出すと、村八分にされ、社会からのけ者にされる。時には「非国民」や「売国奴」と呼ばれる。それが怖いから、みんな沈黙するようになった。それが現実です。

でも、これじゃさすがにまずいでしょう。だから、もっとひどい世の中になる前に、「失敗から得られる歴史の教訓」を、とくに若い人たちに届く形で誰かが発言すべきだと思いました。誰もやらないなら自分でやろうということで、今回の本を書きました。

――文字だけでなく漫画もありましたが、ご自身で描かれたんですか?

坂木:そうです。表紙以外は全部自分で作っています。

――熱量がすごいですね。日本の国力が落ちているというのは、おそらく誰もが気づいてはいるのでしょう。そうなると不思議なのが、最近よく見かける、日本を過度にほめたたえるような歴史認識に基づいた情報です。

坂木:私は世代的に高度成長期に少し触れているのですが、道路がきれいになったり高いビルができたりといったことを目の当たりにして、社会がどんどん豊かになる実感があるわけですよ。若い人がたくさんいて、将来に希望が持てました。

ただ、その時代が終わって、今度は中国やアジアの国が台頭してきました。高度成長の後のやり方に改めることもなくぼーっとしているうちに、中国や韓国がどんどん抜いていった。そうなると日本人にも焦りが生まれますから「日本は世界に強い影響力を持っていて、こんなにすごい国なんだ」と思って安心したい心理になるんだと思います。一種の現実逃避ですよね。

――坂木さんが感じている日本の歴史教育についての問題意識についてお聞かせください。個人的には、社会人になってからは意識的に学ばない限りほとんど歴史に触れる機会がない点や、若年層の歴史への関心が低下しているように見えることが気になっています。

坂木:日本の歴史教育は、暗記重視の詰め込み教育ですよね。歴史教育で大事なのは、過去の出来事から未来への教訓となることを学ぶことなのに、それができていないと感じます。

最たるものが明治維新以後の近現代です。

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