いらんこと言うな!大河ドラマ「鎌倉殿の13人」随一の悪女?宮沢りえ演じる「牧の方」のエピソード

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いらんこと言うな!大河ドラマ「鎌倉殿の13人」随一の悪女?宮沢りえ演じる「牧の方」のエピソード

令和4年(2022年)の放送予定で少し早いですが、三谷幸喜の脚本や主演の小栗旬など豪華なキャスト陣が話題を呼んでいる大河ドラマ「鎌倉殿の13人

鎌倉幕府を舞台に繰り広げられる権力抗争には、男性ばかりでなく女性も多く巻き込まれますが、中でも強烈なキャラクターが牧の方(まきのかた)

大河ドラマでは宮沢りえが演じる予定となっていますが、牧の方とは、一体どのような女性だったのでしょうか。

牧の方が惹き起こした4つの事件

牧の方は生年不詳、駿河国大岡牧(現:静岡県沼津市)を治めていた下級貴族・牧三郎宗親(まき さぶろうむねちか)の娘として誕生します。

妻を亡くした北条四郎時政(ほうじょう しろうときまさ)の後妻として嫁ぎますが、父娘ほども歳の離れた若い妻に時政は夢中。折々にふれて彼女に惑わされてしまうのでした。

牧の方に夢中な時政(イメージ)

そんな牧の方が絡んでくるのは、大きく以下の四つ。

頼朝公の浮気騒動 北条義時の排斥未遂 畠山重忠の謀殺 政権転覆未遂(牧氏事件)

どれも穏やかではありませんが、一つずつ見ていきましょう。

1.頼朝公の浮気騒動

これは頼朝公の浮気をわざわざ妻・北条政子(まさこ)に密告。

当然のごとく怒り狂った政子は浮気相手(亀の前)が匿われている家を破壊させるわ、頼朝公は逆ギレするわ、面子をつぶされた時政は軍勢を集めて伊豆国へ帰ってしまうわと、一時は鎌倉を二分しかねない大騒動に発展してしまいました。

頼朝公の浮気に怒れる政子

事の発端は頼朝公の浮気であり、100%悪いのは間違いありませんが、モノには言い方というものがあり、いくら政子の気性が激しいとは言っても、家を破壊させるまで激怒させたのは、牧の方に多分の悪意が含まれていたのでしょう。

2.北条義時の排斥未遂

牧の方は時政との間に一男三女をもうけており、長男の北条政範(まさのり)に北条の家督を継がせるため、時政と共に先妻の子である北条義時(よしとき。江間小四郎)を排斥しようと目論みます。

当時、義時は江間(えま)の名字を称しており、北条の家督は長兄・北条宗時(むねとき)が継ぐはずでしたが、頼朝公の挙兵直後に討死してしまったため、義時にお鉢が回って来る可能性がありました。

石橋山の合戦で奮闘する宗時たち。勝川春亭「石橋山合戦」

しかし、このままでは寵愛する(そして先妻よりも身分の高い)牧の方の子である政範が家督を継ぎ、鎌倉幕府の執権を牛耳られてしまいます。

政範が16歳の若さで亡くなったため野望は阻止されたと思いきや、これで諦める牧の方ではありませんでした。

3.畠山重忠の謀殺

息子の政範がダメなら、今度は娘婿の平賀朝雅(ひらが ともまさ)を鎌倉将軍に推そうと働きかけます。

朝雅は源氏の家系で頼朝公の猶子ともなっていたので、将軍職を継ぐ資格は十分ですが、実の子である源頼家(よりいえ。第2代将軍)、源実朝(さねとも。後に第3代将軍)がいたため、その順位は低めです。

また、貴族かぶれの朝雅は御家人たちから人望に乏しく、畠山重保(はたけやま しげやす)に批判されたことを怨んで、その父・畠山重忠(しげただ)ともども謀叛人の濡れ衣を着せて攻め滅ぼしてしまいました。

畠山重忠の最期。あっけなく滅ぼされたことからも、明らかに潔白であったことが判る。月岡芳年「芳年武者无類 畠山庄司重忠」

誰よりも忠義に篤く、鎌倉武士の鑑と誰もが称賛していた畠山重忠を討ったことで北条氏に批判が集まり、執権の座を追われかねない事態に陥った時政は、起死回生の一手を図ります。

4.政権転覆未遂(牧氏事件)

朝雅さえ将軍になってしまえば、その後ろ盾となった我らの地位は安泰……そう思ったのか、時政と牧の方は将軍・実朝を隠居させよう(拒否すれば殺害しよう)としたものの、義時や政子はもちろん、御家人たちも全員反対。

完全に孤立してしまった時政と牧の方は出家させられ、鎌倉から伊豆国へと追放されてしまったのでした。

鎌倉の草創に多大な功績を挙げた一方、欲に駆られて晩節を汚してしまった時政。歌川芳虎「大日本六十余将 伊豆 北條相模守時政」

時政は政界に復帰することなく建保3年(1215年)に現地で病死、牧の方は娘婿の藤原国通(ふじわらの くにみち。朝雅の未亡人と結婚)を頼って上洛、京都で余生を過ごしたということです。

その後、嘉禄3年(1227年)に時政の13回忌法要を行っているものの、国通の財力を恃んで贅沢三昧に暮らしていたようで、心ある人々はこれを非難したと言いますが、それを気にするような牧の方でもなかったでしょう。

終わりに

北条時政を惑わせて権力奪取に野心を燃やし、さんざん御家人たちを引っ掻き回した挙げ句、計画が潰えたら京都へ移住して贅沢な余生を過ごした牧の方。

出家した女狐もとい牧の方(イメージ)

絵に描いたような悪女ぶりでしたが、鎌倉幕府における権力抗争を象徴する一人として歴史に異彩を放っており、これが三谷脚本でどのように描かれるのか、今から楽しみですね!

※参考文献:

石井進 編『もののふの都鎌倉と北条氏』新人物往来社、1999年9月 上横手雅敬 監修『古代・中世の政治と文化』、思文閣出版、1994年4月 細川重男『執権 北条氏と鎌倉幕府』講談社学術文庫、2019年10月 『角川日本地名大辞典 22 静岡県』角川書店、1982年10月

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