葬儀葬式や宗教儀礼が遺族に施すグリーフケアとしての役割とは (1/3ページ)

心に残る家族葬

葬儀葬式や宗教儀礼が遺族に施すグリーフケアとしての役割とは

葬儀、法事、伝統的な宗教儀礼は簡易化、減少化の一途を辿っている。その一方でこれらが悲嘆に陥っている遺族に施すグリーフケアの手段としても有効であるとする見方もある。グリーフケアの一貫としての葬儀の役割とは。

■グリーフケアとは心の安定を取り戻すために乗り越えるべき課題を意味する

悲嘆(grief)とは、悲しみ、嘆きの感情であるとともに、そのプロセスをひとつひとつ段階を追って克服、消化していくことで心の安定を取り戻すことのできる課題の総称であると定義づけることができる。臨床心理学者、ジョン・ウィリアム・ウォーデンは、「段階」という表現では自発的なニュアンスが薄いことから、遺族が積極的に自分でできるという実感が含まれる「課題」という言葉を提唱した。この「課題」は遺族の意志でいくらでも直視することなく回避することが可能ではある。しかし悲嘆を乗り越えるためにはこの課題をクリアする作業が必要である。


■グリーフケアの最初の課題は亡くなった事実を受入れること

まず、喪失の事実の受容と苦痛を乗り越える作業。その最初の課題はその人が亡くなったという事実を受け入れることである。喪失というあまりの絶望から自身を護るために心は事実を否認する。そして死んだ人を捜し求める探索行動などを取ることがある。

これに対して、葬儀や宗教儀礼を行うなどして喪失の事実を認識することが課題達成につながる。事実を受容するということは回避していた苦痛と直面することである。苦痛を乗り越えるには感情を抑えつけず、その人へのすべての想いに直面することが必要となる。

■その人のいない新しい世界に適応する

その人のいない世界とは、いわば新しい世界である。新しい人生観、人間関係の構築、形成など積極的に取り組むことで課題を達成する。そのためには、死者を情緒的に再配置し、生活を続けることだ。死者のいない環境に適応できたとしてもそれは死者を忘れることにはならない。死者は依然として心の中に生きている。死者との「関係」は、遺された人の心理的な生活の中に、亡くなった配偶者に適当な場所を探し出すことと関わっている。これは死者への固着ではない。死者を心の場所に再配置することで、いわば死者との関係を再構築する。

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