葬儀葬式や宗教儀礼が遺族に施すグリーフケアとしての役割とは (2/3ページ)
そうすることで死者に囚われることなく、新しい生活を営めるようになるのである。
■死者との関係を再構築する
ノンフィクションライター、中島由佳利の著書には、亡くなった姉が「会いにきた」という例が掲載されている。妹は姉がいつも近くにいることを確信し、新しい人生を前向きに送っているという。自分にとってリアルであるなら死者が会いにきたことが客観的事実であるかは問題ではなく、死者との関係を再構築した例であるといえる。
こうした作業は「死んだら終わり」の唯物論的科学的世界観では成し得ない。葬儀、儀礼も単に死体処理のプロセスとして形式的に行っても意味がない。葬儀、儀礼は死者との関係をもう一度見直す場でもあるのだ。
■葬儀葬式や宗教儀礼が果たすグリーフケアとしての役割
死亡をもって入院・介護生活が終わった家族はその後どうなるであろうか。カウンセリングや精神科への紹介の時期は適切なタイミングが必要であり、中島も遺族ケアに力を入れている病院を紹介している。しかし、遺族や関係者には必ずしもそのような知識や自発的に実際に接触する行動を起こせない人がいないことも多いのではないだろうか。「グリーフケア」という用語自体知っている一般人もさほど多くはないと思われる。そこで伝統的に培われてきた葬儀の意義がある。グリーフケアを意識的に行わなくても、葬儀には遺族自身によるグリーフケアとしての効果があると考えられる。臨床心理学者、白井明美は「葬式は故人が亡くなったという事実を現実的に認識する機会となり、故人の人生を振り返ることができる点でも意義は大きい」と述べ、ウォーデンも「多くの遺族を死の受け入れへ導く助けをする」と述べている。また精神科医、ハロルド・G・コーニックは宗教儀礼によってストレスなどのメンタルヘルスが改善するなどの研究を発表している。葬儀のような伝統的な宗教儀礼がグリーフケアとして実践されてきたことは見直されるべきである。
■なぜ葬儀葬式を行うのか
悲嘆をその名の通り嘆き悲しむ心の状態としてではなく、現実の重みから自身を守り、メンタルを安定させるための前向きの手段として捉えることがグリーフケア・グリーフワークの基本姿勢であろう。