天下の御意見番・大久保彦左衛門が好んで食した戦国武将のパワーフード「鰹節」 (3/4ページ)
「おぉ……彦左殿、しばらくぶりじゃな」
戦さ場では「井伊の赤鬼」と恐れられる猛将も、さすがに病はこたえるようで、力なく声を絞ります。
「ははは、鬼の霍乱か。そんな貴殿に、ホレ」
彦左衛門は笑いながら、懐から見舞いの品を取り出しました。
「これは……?」
「見て解らんか。鰹節じゃ」
そりゃ解るけど……普通、こんなものを見舞いには持ってきません。戸惑う直政を前に、彦左衛門は得意顔です。
「昔は貴殿と轡(くつわ)を並べ、よう戦さ場を駆けずり回ったものじゃが、いざ立身出世を果たしてみると、贅沢暮らしで身体がなまってしまったのやも知れぬぞ。ここらで一つ、昔のようにコレでもかじって、元気を取り戻すことじゃ」
彦左衛門は帯に差しておいた自分の鰹節を取り出すと、ひとかじりしてニヤリと笑いました。
「まったく(自分は出世してできないからと)負け惜しみを……しかし、彦左殿には敵わんな」
直政も貰った鰹節の先っぽをかじってニヤリ。久しぶりに、戦さ場を駆けずり回っていた頃の顔に戻ったようです。
自分が立身出世を果たすにつれて、周囲の者たちがよそよそしくなっていく中、彦左衛門だけは変わらず接してくれる。晩年の直政にとって、ホッとするひとときとなったことでしょう。