東京オリンピック開会式で海老蔵が魅せた!歌舞伎「暫(しばらく)」の単純痛快な物語 (3/4ページ)
(※)実際の清原武衡はそんな大それた謀叛を起こしていませんし、「後三年の役(永保3・1083年~寛治元・1087年)」で敵味方になったとは言え、権五郎と直接対決した史実もありません。
永らく天下泰平が謳われた江戸時代。表向きの戦さこそなくなったものの、権力を嵩(かさ)にきた役人の搾取や、庶民同士でも陰湿ないじめが蔓延(まぁ、現代も変わりませんね)。
「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ」
※和田竜『のぼうの城 上』185ページ
「長いものには巻かれよ」「水に落ちた犬は棒で叩け」
敵の中ボス・鹿島入道震斎を要石で鎮める権五郎。「雨にハ困り野じゆく志ばらくのそと祢」
とかく鬱屈した世の中に「暫く!」と一石を投じ、こざかしい連中をバッサバッサと斬り捨てて、悪の権化を完全論破。そんな痛快なヒーローを望む庶民の思いが、あの一言に受け継がれてきたのでしょう。
終わりにところ改めて、今回の東京オリンピック。