始まりはライブで聴いた印象的な曲だった――小説第2作『これはただの夏』を燃え殻さんに聞く(1) (3/5ページ)

――ただ、「ボク」はやはり年齢や職業からいっても、一番燃え殻さんを投影しているのかなとも感じました。
燃え殻:多かれ少なかれ、そうでしょうね。
――「ボク」はアンニュイさや不安、生きにくさを抱えながら生きています。でも、その一方で社会人としてちゃんと生活できている部分もある。取引先の披露宴で出会った女性・優香は、「ボク」のことを「あなたはいい加減じゃない」と言いますけど、まさにそうだなと。その意味で、この人物に自分自身を投影できる読者は多いと思います。
燃え殻:みんなギリギリで日々を生きているんですよね。社会性はあるけれど、生きづらさを抱えている中でなんとか折り合いをつけている。
通勤電車に乗ったら、途中下車したり、乗り過ごしたりしないじゃないですか。ほとんどの人は会社がある駅まで電車に乗って、降りて仕事をして、同じ電車に乗って帰って、給料をもらったらローンを返して…という日々を繰り返すわけですよね。会社のある駅を乗り過ごして、そのまま遠くに行っちゃうことなんてないわけで。
でも、そのまま遠くに行きたいという衝動もあるわけです。その衝動はどのくらい濃いかというと、(ジュースの)トロピカーナくらい濃いんじゃないかなと。そういうものを同じように抱えているのかなと思いますね。
――「ボク」から見た優香はかなり輪郭がぼやけているように感じます。一方で同じマンションに住んでいる小学生の女の子・明菜はすごくはっきりしたキャラクターです。