始まりはライブで聴いた印象的な曲だった――小説第2作『これはただの夏』を燃え殻さんに聞く(1) (5/5ページ)

新刊JP

そこが大きな変化をもたらしたんじゃないかなと思います。でもそれは明菜だけでなくて、大関や優香もそうです。

また、大関が死というものを突きつけて、初めて「ボク」は大関との関係性や生きることの意味を考えたり、もっと気を使おうと思ったりした。優香という存在を通しても「ボク」は変わっていく。そういった外的要因の中で、少しずつ大人になっていくんですよね。

――今、おっしゃられたように大関も「ボク」に対して大きな影響を与えます。達観した人物として描かれているように思いますが、彼の存在を置いたポイントは?

燃え殻:僕は今48歳なんですけど、実感として死ぬことと生きることの差がなくなってきているように感じることが多くなってきたんです。

僕の知り合いに、会ってから数日後に亡くなった人がいるんですけど、いまだに死んだという実感が湧かないんです。今でもその人から電話がかかってきそうで。逆に生きているけれど、連絡も取り合わない、生きているのか死んでいるのかも分からない人もいる。その人の方が、死んでしまった知り合いよりも遠くに感じるんですよね。

大関は「ボク」にとって前者のような存在で、常に自分の中の意識において近いところにいます。だから、生きていることと死んでいることの差って、自分の考え一つで変わると思うんです。

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