恋人に逢おうと公務をサボった結果…『今昔物語集』より橘則光の武勇伝 (3/4ページ)
瞬く間に三人を斬り殺すと、残った者どもは泡を食って退散します。
「「「ひえぇっ!」」」
「……何じゃ、口ほどにもない」
さぁ先を急ごうと刀を拭った則光ですが、せっかく美々しく誂えた装束に、返り血がべったり。
「あぁ、これではまた別の意味で彼女にフラれてしまう。仕方ない、今夜のところは引き上げよう」
則光は誰かに目撃されていないか周囲を見渡すと、斬り捨てた遺体を放置して内裏へと戻ります。
血に濡れた装束を着替えて最初からずっといたような顔で夜を明かしたのでした。
翌朝、死体を見てみると……「おい、そこの辻で斬り合いがあったらしいぞ!」
翌朝、同僚たちに起こされた則光は、早鐘を打つ心臓をおさえながら、なるべく平静を装います。
「さ、最近は何かと物騒だからな。血の穢れが前途に障るから、そういうのは見ないのがよかろう」
まだ自分の仕業とはバレていないようですが……どうにか話題をそらそうとする則光の努力も虚しく、上司が「宿直も明けたし、さっそく見に行こう!」と言うので、つき合わされてしまうのでした。
(あぁ、どうかバレませんように……)
牛車に揺られながら、もう気が気でない則光でしたが、いざ昨夜の現場に到着すると、少し様子が違います。