恋人に逢おうと公務をサボった結果…『今昔物語集』より橘則光の武勇伝 (1/4ページ)
恋人が出来ると身も心も浮き浮きして、仕事が手につかなくなってしまった経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
まぁ多少(こと若いうち、経験が浅いうち)は仕方がないものの、逢いたさ余って仕事をさぼってしまうまでくると、流石にいただけません。
それでも逢いたい、狂おしい気持ちは今も昔も変わらなかったようで、平安貴族の中にも公務を抜けて恋人に耽溺する者がいたようです。
今回はそんな一人、平安時代の説話集『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』より橘則光(たちばなの のりみつ)のエピソードを紹介したいと思います。
夜中に内裏を抜け出して……今は昔、橘則光が左衛門尉(さゑもんのじょう)を務めていたころと言いますから、彼が左衛門尉に叙せられた長徳3年(998年)ごろのこと。
ある夜、則光は宿直(とのい。内裏の警護)任務をサボって恋人との逢瀬を遂げるべく、そそくさと夜の街へと出かけます。
夜の街、なんて聞くと現代人なら何やら楽しげ(あるいはいかがわしげ)な風景を想像しそうなものですが、平安時代の夜道は本当に真っ暗。