ヘレン・ケラーとエマニュエル・スウェーデンボルグの神秘思想 (2/4ページ)

心に残る家族葬

50代から幻視体験をするようになり、霊との会話や霊界探訪の記録を残している。
しかし、スウェーデンボルグの言う霊界とは天や宇宙などの遥か彼方の異世界ではない。人間の精神は霊界に属しており、天使や霊は人間の精神と結びついているとしている。霊界とは我々自身の内的世界のことであるという。ヘレンはこの思想に基づき、スウェーデンボルグについて語っている著書「ヘレン・ケラー 光の中へ」でこのように述べている(以下、引用は全て同書より)。

「私を取り囲んでいるすべては、おそらくは沈黙と闇でしょう。私の霊においては、色彩が私のすべての思考を彩ってゆくのです」

ヘレンはスウェーデンボルグの教説により、霊的世界の実在を確信し、三重苦を超越する希望を見出したのである。
スウェーデンボルグの幻視が真実であるかはわからない。なぜわからないかといえば、我々は認識のほとんどを視力に依っているからである。眼に見えないものの存在を信じるのは、特に科学的世界観が浸透した現代では難しい。物見えぬヘレンにとっては我々が現実であると認識する世界と、スウェーデンボルグが提示する霊的世界との間に差異はなく、偏見による抵抗もなかった。

■ふたつの目覚め

三重苦の少女ヘレンが「世界」を認識した物語は有名である。家庭教師サリバン先生はヘレンの手をつかみ、その手に水を流した。そしてヘレンの片方の手に指で「WATER」と書いた。ヘレンは、この冷たい何かと、「W・A・T・E・R」という記号の組み合わせが対応していることを知った。初めて外界と本当の意味で触れ合ったのだ。ヘレンの前に突如、無限の現実世界が現れたのである。

一方、ジョン・ヒッツはワシントン駐在のスイス総領事を務め、聾者の支援などを行っていた人物である。ヘレンが13歳のときに出会い、点字を習っていた彼は文通を続け、様々なジャンルの本を点訳して贈ったという。その中にスウェーデンボルグの「天界と地獄」があり、ヘレンはスウェーデンボルグの思想に感銘を受けた。

霊界とは我々自身の内的世界のことであるとするする思想は、ヘレンにとって衝撃だったに違いない。ヘレンが閉じ込められていた自己の内的世界が牢獄ではなく、霊界=真実の世界であるというのだから。

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